ちょっと不思議な?ツッコミどころ満載の記憶障害系ラブストーリー
感想『記憶の時間』レビュー
韓国映画『記憶の時間』は、記憶障害をテーマにしたラブストーリーである。主演はウジン役のイ・ソンヨルと、ヘス役のユビン。すべてを忘れられない男と、毎月記憶を失う女という、真逆の2人の恋を描く作品である。
重厚なテーマにも関わらず、脚本のご都合主義やツッコミどころ満載の展開が目立ち、シリアスさとB級的な面白さが同居している異色の恋愛映画となっている。
本記事では、韓国映画『記憶の時間』のあらすじ、感想、見どころ、惜しいポイントを感想レビュー形式で紹介する。リアルさや整合性を求める人には向かないが、「ツッコミながら見る映画」としては楽しめるかもしれない
──そんな一風変わった作品『記憶の時間』──
※本レビューはネタバレを含みます。
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スーパースターのウジンは、恋人を亡くしてから、小さなことでもすべて記憶し続けてしまうようになった。恋人との鮮明な記憶が毎日蘇り、自責の念に苦しんでいたウジンだったがヘスに出会い心に安らぎを感じ始める。一方ヘスは数年前の事故以来、記憶が毎月リセットされて過去のことは忘れてしまうという苦しみの中にいた。やがて衝撃的な過去が明らかになり、ふたりはそれぞれに決意を固める。
記憶障害ラブストーリー映画『記憶の時間』の魅力と課題【韓国映画レビュー】
韓国映画『記憶の時間』は、ありがちな“記憶障害”をテーマにした恋愛ストーリー。
「記憶を失う恋人」という設定自体は新しくない。ハリウッドには『50回目のファーストキス』があるし、日本でも山田孝之と長澤まさみのリメイク版が知られている。
韓国映画でも『私の頭の中の消しゴム』など、記憶をテーマにした恋愛作は少なくない。
ただし本作『記憶の時間』の特徴は、両者が真逆の記憶障害を持つところにある。
- 一生忘れない男(重すぎる!)
- 毎月忘れてしまう女(軽すぎる?)
登場人物2人ともが記憶に正反対の問題を抱えているという設定は一見ユニークだが、それを活かしきれない展開に終始している。
淡々と進むストーリー、緩いテンポ、飛ばし飛ばし観たくなる衝動をグッと押さえて最後まで視聴したが、目立つのは脚本や演出の粗さ、作品全体としての説得力に欠ける印象を受けた。そして極まったご都合主義。
設定だけ見ればドラマチックなのだが、実際に映画を観ると「その設定、最後まで使い切る気なかったのでは?」と思うほど扱いが薄い。
真剣に向き合うには、ツッコミどころが多すぎて集中できない一本だった。
映画『記憶の時間』のあらすじと設定解説──2人の出会いと記憶障害の描き方
登場人物2人ともが記憶に障害を持っている設定ということは前述したが、それぞれの記憶の時間を説明する。
忘れられない男・ウジンの記憶力がもたらす葛藤
ものすごい能力だが、しかし悲しい記憶に苦悩することだけに焦点が置かれている。
超難関試験合格し放題とか、超人気芸能人という設定なんだからクイズ番組で無双するとか、そんな描き方もできそうだが、作中では迷子の母親探しに生かすだけで終わる。せっかくの特異な能力も、物語の中であまり効果的に活かされていなかったのが残念だった。
毎月記憶を失うヒロイン・ヘスのリセット描写と違和感
記憶がリセットされるという設定はいろんな作品で見てきたが、今回のへスはイマイチぴんと来ない。普通は日記を残しておくとか、写真を残しておくとか、ボイスレコーダーを使うとか、リセット先の自分のために何らかの外部記憶を利用するハズだが、そういった描写が一切ないからだ。
そのため、悲しい障害であるのに感情移入ができない。
映画『記憶の時間』の設定は魅力的だが惜しい理由
相反する2人の記憶障害という、設定としてはかなり魅力的でドラマチックな構成にもかかわらず、それが物語の芯として機能しているとは言い難い。もう少し丁寧に練り込めば、感情にも深みが出て、印象に残る作品になったはず。題材がいいだけに、なおさらもったいない。
ツッコミどころ満載!映画『記憶の時間』のストーリー展開を解説
記憶障害という設定以外にも、違和感や展開にやや強引さが目立つ。
物語冒頭、スーパースターのウジンは過去の記憶に辛くて耐えきれず、所属していた芸能事務所を飛び出して失踪。ところがその“隠れ場所”が、芸能事務所から歩いて行ける距離のコーヒーショップという驚きの近場。
結局すぐに見つかるわけだが、これはもう脚本上そうなるためだけの構成としか思えない。
さらなるご都合主義は、ヘスが黒ずくめの男に襲われるシーン。取っ組み合いの中で、いつでもヘスの頭にハンマーを振り下ろせる状態になるが、いつまでも下手なもみ合いを続ける。まるで何かを待ってるようだなぁと思っていたら、案の定、ウジンがビールを買いに行っている途中に“たまたま”通りかかって助けに入るが、別に探していたわけでもなく、ただの偶然という雑な導線。
そして2人して男から逃げるのだが、逃走ルートがなぜか“人通りの少ない道”。すぐそばに大通りがあるのに…。犯人もハンマーを堂々と持ったまま追ってきて、なぜか誰にも見つからないという不思議。少々現実味に欠ける。 真夜中というわけでもない。
そしてまたヘスは同じ犯人に襲われるのだが、今度もやはり取っ組み合いの描写にやや不自然さがあり、状況の緊迫感に対してリアリティが薄く感じられ、ハンマーは相変わらず空中待機。結局ヘスは無事。
極めつけは、前ぶれもなく突然ヘスが「治療のためにスイスに旅立つ」とか言い出す。友人ダソムの「あの子は死ぬつもりなんです!」というなんの根拠もない発言で雰囲気は重くなるが、ウジンは引き留めもできずあっさりお見送り。
そして2年後、ヘスは何事もなかったかのように帰国して、ウジンと恋人になる。
ちなみに、2人の記憶障害は治ってないままである。
一体この映画は何を描きたかったのか、ラストまで見ても明確なテーマは感じ取れなかった。
映画『記憶の時間』はどんな人にオススメ?楽しみ方と視聴ポイント
他にもツッコミどころは山ほどある。
たとえば──
- ヘスを襲わせたのはウジンの兄貴だった。
- 実は3年前の事故はその兄貴の策略だった。
- 兄貴が罪を告白した目の前で「事故はヘスのせい」とのたまうウジンのマネージャー
- 3年前の事故で記憶障害を負ったはずのヘスが、「私は5年前から進めないの」と発言(※たぶん脚本か翻訳のミス)。
などなど、矛盾や謎が盛りだくさん!しかし、これらすべてを挙げていたらレビューが超大作になってしまうので、このあたりで筆を置く。
総じて『記憶の時間』は、ストーリーの整合性や感情のリアリティを求める人にはまったくおすすめできまない。
同じ記憶障害恋愛でも『50回目のファーストキス』が「笑いと切なさ」で魅せたのに対し、本作は「ご都合主義とツッコミポイント」で笑わせる構造になっている。したがって、オススメ出来るのは、
- 突っ込みながら映画を楽しみたい人
- 荒唐無稽な展開を笑って流せる人
- B級恋愛映画を語り合いたい人
などには、むしろピッタリ?かもしれない。
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まとめ
韓国映画『記憶の時間』は、記憶障害というドラマチックなテーマを扱いながらも、脚本の粗さやご都合主義な展開によって独特のB級感を放つ一本である。シリアスに浸るには難しいが、突っ込みながら観ることでむしろ楽しめるユニークなラブストーリーとも言えるだろう。
整合性よりも奇抜さやツッコミどころを楽しめる人にはオススメできる作品であり、真剣な感動よりも会話のネタとして観るには十分に価値がある映画だった。
映画『記憶の時間(2021年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:ファン・ギュソン
- 出演:イ・ソンヨル、ユビン
- 公開年:2024年
- 上映時間:96分
- ジャンル:ロマンス、記憶障害もの