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映画『六人の嘘つきな大学生』感想レビュー|就活×人狼ゲームのミステリー考察

2024年11月22日に日本で公開された『六人の嘘つきな大学生』は、浅倉秋成の同名小説を原作とする青春ミステリー映画。
エンタテインメント企業の新卒採用最終選考に残った6人の就活生が、密室で嘘と罪を暴かれる物語を描いている。
浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗らが出演し、監督は佐藤祐市が務める。

🐺皆の後ろめたい過去をリークしたのは誰か?就職活動人狼ゲーム

映画『六人の嘘つきな大学生』感想レビュー

就職活動をテーマにしたミステリー映画『六人の嘘つきな大学生』は、若者たちの焦りや不安、そして人間関係のもろさを鋭く描き出した作品である。物語の舞台となるのは、大手IT企業の特別選考。最終候補に残った六人の大学生たちに与えられた課題は、「六人の中から内定者を一人だけ決める」というものだった。協力と対立、真実と欺瞞、それぞれが交錯する密室で、次第に暴かれていく後ろ暗い過去。その駆け引きは視聴者を緊張させ、予測不能の展開へと導いていく。

本作は浅倉秋成による日本の小説『六人の嘘つきな大学生』が原作。発表後人気を博し、舞台、漫画、ラジオドラマ、そして2024年に映画化された。

私は映画版のみ鑑賞。本作は、キャスティングでもう「誰がどのような役回りなのか」を予想できてしまう印象はあったが、まぁ私が視聴した理由も浜辺美波が出演しているから、だ。多少なりとも、作品タイトルから内容に興味を持ったのも事実ではあるが。

原作勢の映画版の評価は、もとのストーリーを描きれていないという点で低レビューが目立つ。たしかに映画だけ観れば無理やり感というか、多少のごり押しを察知してしまう仕上がりにはなっている。映画には尺の都合があるので、仕方のないことだろうか。

後述するが、部分部分では程よい緊張感と謎解きの面白さもあり、エンタメとして楽しめる瞬間は存在する。しかしながら全体を俯瞰してみると、粗が目立つといった印象。推理ものとしては致命的な面もある。視聴後も気持ちの良い解放感はなく、もんもんとした、なんだか物足りなさを感じた。

 

※本レビューはネタバレを控えておりますが、展開を匂わせる表現を用いています。

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『六人の嘘つきな大学生』あらすじ

就職活動の最終選考に残った六人の大学生が、企業の特別選考の場で同じ部屋に集められる。選考の課題は「六人の中から皆で話し合って一人の内定者を決める」こと。互いを評価しあうこの試練の中で、表面的には協力的に振る舞うものの、それぞれが抱える後ろめたい秘密や思惑、恐れが少しずつ表に出てくる。やがて互いに疑い合う積み重ねが波紋を呼び、真実と虚構、誰が信用に足るのか、そして内定は誰の手に渡るのか――。

映画『六人の嘘つきな大学生』感想・印象

映画『六人の嘘つきな大学生』は、あらすじや予告編を見ても「六人の中から一人を選ぶ」という物語が紹介されているから、視聴前からストーリーの大枠はあらかた予想できた。たぶん六人で馴れ合いからの仲良しこよしで協力しつつ、しかし次第に構築した人間関係をリークでぶち壊されていき、後半からは解答編に突入という流れにことは進む――まさにその通りの展開になった。

視聴前は就活生が六人もいたんじゃキャラクターの見分けがつくのかしらん?と思っていたが、それぞれにちゃんとキャラは濃く個性が立っている。顔と名前が一致するか不安だったけれど、何とかなるものである。

グループディスカス形式のシーンでは、一度に全員の裏の顔が暴露されるのではなく、一人ひとり順番に露呈していくさまは緊張感があってよい。次は誰のどんな秘密が暴かれるのか、その秘密が明らかとなることで周囲の皆はどう反応し、そしてどう応対するのかが視聴していて楽しい。白日の下に晒される個人情報は、大きなものから小さなものまで三者三様、当人の反応は十人十色でざっくばらんだ。一応、入社試験で採用担当はその様子を見ているという設定にもかかわらず、秘密をばらされた時の反応は本当にざっくばらん(発言や行動が素直で裏表がない様)でそのリアクション自体が大げさで勢いがあり見どころではあるが、しかし作品全体としてみると少々リアリティに欠ける。これが採用試験の場だってことを忘れてないか?

さておき、ミステリーものということはわかっているので、序盤から叙述トリックや台詞の裏を疑いながら、かなり気を付けて観てはいたが、実際にはそこまで複雑な仕掛けは用意されていなかった。重要な証拠や肝心な証言は解答編まで出てこないので、むしろ誰でも狼になりえたことを考えると、視聴者に自由に想像させて楽しませるという手法を取っていたのかもしれない。本格謎解きミステリーのように一人を見つけ出すというよりは、選択肢によって犯人が変わるマルチエンディングのような感覚だった。ゲームにしたら面白いだろう。まぁ映画ではちゃんと犯人は一人に収束するんだけれど、その過程の揺らぎを楽しませる点はユニークである。

就職面接でグループディスカッションをする就活生たち

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ミステリー映画としてのリアリティの欠如と違和感

映画『六人の嘘つきな大学生』は一つ一つの演出や表現は勢いがあって面白く、部分部分では楽しめる作品だ。しかしながらそれらをつなぎ合わせて全体として眺めてみると、やはりツッコミどころはたくさんある。ここではそれらをネタバレは控えながら、鑑賞中に気になった疑問点を整理する。

  • 採用試験監督側が完全に無反応:次々に就職活動生の、今後の将来にもかかわる秘密が暴露されていくのに、採用試験を催している企業側が何もアクションを起こさないというのには納得がいかない。採用者側はカメラで様子を見ているという設定である。秘密をリークした犯人が就活生側にいるのなら名誉毀損・プライバシー侵害にあたる可能性がある。またリークしたのが採用者側であってもやはり名誉毀損・プライバシー侵害、そして過剰な心理的負担といった法律的、倫理的な問題が残る。どちらの場合であっても、例えば「この会社でこんな採用試験をされました。」「この会社の採用試験で問題があったのに対応されませんでした。」なんてXにポストされたら炎上は必至である。
  • 10,000人の応募に採用は1人:作中では極端な採用人数が設けられている。例えばTOYOTA自動車の採用人数は年間500人。応募人数は約10,000人である。それと比較すると映画の設定は現実味が薄い。まぁ最終候補が6人というのも少なすぎるが。「当社の業績を鑑み採用人数を減らしました」とかなんとかメールで御託を並べるが、むしろそんな企業怪しくないか?将来性とか。年に何回採用面接やってるの?
  • 犯人がサイコパスで動機が弱く、その目的も果たせていない:物語を動かす、「皆の後ろめたい秘密をリークした犯人」の動機が弱く、説得力に欠ける。その動機で犯人が犯行に至るのはお門違いであるし、斜め上でもある。しかもその目的も果たせていない。なにがしたかったのか?本人は人事への復讐と語っていたがなんの復讐にもなっていないし、動機に使われた人物も、巻き込まれた同期の就活生もいい迷惑である。
  • 伏線が期待外れっていうかしょぼい:作中ではちょいちょい意味深な伏線を紛れ込ませてくるが、その効果が薄い。「これは何かあるぞ!?」と匂わせる展開をさせておきながら、その内容が「なんだそんなことか」と思わせるものばかりで明かされる真実は弱く、謎解きの快感に欠けた。
  • 正直に話せば解決する問題:集団ディスカッションで次々と暴露されるそれぞれの秘密。解答編でその真実が語られるのだが、よくよく聞けば後ろめたいことではなく、むしろ称賛されてしかるべき行動だったことが説明される。「むしろ有利じゃないか。なんで採用試験の時に皆の前で正直に話さないの?」という疑問が降りかかる。ここらへんは原作ではしっかりと描かれているかもしれないが、映画ではご都合主義的に後半まで伏せられている。

他にもいくつか細かい疑問はあるが、しかしネタバレを含むのでここら辺にしておこう。総じてリアリティに欠け、強引さが目立っていた。しかしながら何度も述べるが、各種シーンのポイントポイントは緊張感があって面白いので、その整合性のなさに目をつぶれるのなら楽しめるだろう。私はツッコミを入れながらも、楽しめた部類だ。

 

映画『六人の嘘つきな大学生』考察|現実の就職活動と比較して

本作で特徴的であるのは、「六人の中から一人の内定者を決める」という極端な採用試験の設定である。実在の企業でこのような採用が行われることはまずないだろう。グループディスカッションやグループワークは一般的だが、最終的な合否判断は必ず人事担当や役員が行う。学生同士で直接内定者を決めることは、法律的にも倫理的にも問題があるのではないか。

さらに劇中では、就活生の過去や秘密が暴露される。リアルでこれらが行われれば、それが事実であっても名誉毀損やプライバシーの侵害に当たる可能性がある。暴露行為を企業側が黙認した場合、その事実がSNSなどに投稿されれば炎上するのは必至だろう。「この会社では就活生の個人情報が試験で暴かれた」と拡散されれば、企業ブランドは一瞬で崩壊し、社会的信用は失墜する。過去にも不適切な採用試験が報道されて炎上したケースがある以上、そのリスクは計り知れない。

そのような点から考えると、本作は「就活サバイバル」をリアルに描くよりも、就活という場を利用した心理戦・人間関係のドラマを前面に押し出したフィクションであるといえる。現実的にはあり得ない設定だからこそ、逆にエンタメ作品として楽しむ価値が生まれていると私は考える。そうはいっても、リアルとかけ離れすぎている点も否めない。その点では観る人を選ぶ映画作品であるだろう。

 

こんな人にオススメ!

映画『六人の嘘つきな大学生』は、就職活動を題材にしながらも、ミステリー要素や人間ドラマを前面に押し出した作品である。リアリティを求めるとツッコミどころは多いが、それを抜きにして緊張感ある心理戦やキャラクター同士の駆け引きを楽しみたい人には十分に刺さるだろう。

  • 就職活動やグループディスカッションの雰囲気を味わいたい人
  • 「誰が嘘をついているのか?」という人狼ゲーム的な要素が好きな人
  • 原作小説や舞台版を観ていて、映画化作品も気になる人
  • 密室劇・人間関係の崩壊ドラマに惹かれる人

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まとめ|映画『六人の嘘つきな大学生』レビュー総評

映画『六人の嘘つきな大学生』は、実際の就職活動ではあり得ないような極端な設定を大胆に描いたフィクションである。法律的にも倫理的にも問題点は多いが、その「非現実性」がむしろエンターテインメントを強調している。キャラクターの秘密が次々と暴かれていく展開はスリリングで、部分的には非常に楽しめる。

総じていえば、社会派ミステリーというよりは、就活を舞台にしたサバイバルドラマとして視聴するのが正解だろう。作品の粗さやご都合主義を笑い飛ばしながらも、心理戦の駆け引きやキャラクターの濃さを堪能できる人にオススメできる一本である。

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映画『六人の嘘つきな大学生(2024年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:佐藤祐市
  • 出演:浜辺美波, 赤楚衛二, 佐野勇斗, 山下美月, 倉悠貴, 西垣匠
  • 公開年:2024年
  • 上映時間:113分
  • ジャンル:ミステリー

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