主人公のイラストレーターが古いフィルムから過去の記憶と向き合い、家族との絆を再確認していく物語が描かれる。
記憶と再生をテーマにしたヒューマンドラマ作品。
🥺人間ドラマの皮を被ったミステリーぶりたい映画未満
映画『鈍色のキヲク』感想レビュー
映画『鈍色のキヲク』は、人間ドラマとミステリーを融合させようとした作品である。しかしその仕上がりは極めて未熟で、およそ映画作品として成立しているとは言い難い。結論から言えば、視聴はオススメできない邦画である。
映画レビューをする上で私は決めていることがあって、それは「最後まで視聴した作品は必ずレビューを書く」というものだ。逆を言えば、最後まで視聴しなかった映画はレビューしない。例えば『事故物件 恐い間取り』は視聴開始20分くらいで面白くなくて耐え切れず、観るのをやめてしまった。だから『事故物件 恐い間取り』はレビューしていない。
二度言うが、私は最後まで視聴しさえすれば必ずレビューを書く。どんなに感想が書きにくい映画であっても、レビューに時間がかかるような作品であっても、必ず書き上げると決めている。しかしながら、今回の『鈍色のキヲク』は最後まで視聴はしたが、レビューを書くかどうかをかなり悩んだ。上述の通り、映画としての土台に立ってすらいない駄作だからだ。レビューするに値しない作品だとも言える。
例えば、学校の先生の立場になってみよう。不登校で授業に全く出席せず、試験も受けない生徒の成績をどう付けたら良いのか。評価をつける土台が存在しない。実際はなんらかの規定があるのだろうが、今私はそんな心境だ。映画と認められないものを映画レビューすることはできるのか。もちろんこれは単なる例えであって、不登校の人を貶める目的はない。学校に行きたくなければ行かなくても良いというのが、私の意見だ。
では何故そんな作品を最後まで視聴したのかと問われると、それは単純な「怖いもの見たさ」というヤツである。ここまで来たら最後まで行ってしまおう思ってしまった。正直に言えば、後悔はしている。
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『鈍色のキヲク』あらすじ
やがてカナは、父と母、そして祖父が抱えてきた過去へと歩みを進めることになる。青年の導きにより浮かび上がる隠された真実は、家族の記憶と繋がり、彼女を大きな選択へと向かわせる。
1枚の写真に刻まれた衝撃的な事実が明らかになったとき、封じ込められていた「鈍色のキヲク」が甦る。親子の絆、忘れてはならない過去、そして新たな未来への扉。カナは果たして、記憶と向き合うことで家族の幸せを取り戻すことができるのだろうか。
映画『鈍色のキヲク』ストーリーと映像表現の評価
映画『鈍色のキヲク』のストーリー展開は抑揚がなく、淡々と進行していく印象である。「物語を描く」というより、ただその場のシーンを映しているという感じだ。静かな映画というよりは、カメラの数が少ないからなのか、固定で写している時間が長く、無機質な映像となっている。BGMや効果音も最小限で、盛り上がりを期待する場面で唐突に挿入される程度。そのため映像と音響のバランスが悪く、作品全体にメリハリが感じられない。
キャラクター造形も淡白で、魅力的な人物はいない。役者のセリフは「演じる」というよりも台本をそのまま読んでいるかのようなイメージで、感情や心情が全く伝わってこなかった。映画レビューとしては演技面も、大きな弱点であると評価せざるを得ない。
舞台美術に関しても小道具が極端に少なく、登場人物が生活しているはずの部屋にはその生活感が全くない。リアリティを欠き、ハリボテ、借り物の空間といった印象だ。みんなミニマリストなのか?別にミニマリストを見下しているわけではない。私もミニマリストだ。ミニマリズム的な意図によるシンプルさというより、単に作り込み不足に見えてしまう。
こうしたキャラクター、場景、空間、質感、それら全てが作り物のように感じられて、いや作り物であるのは全ての映画がそりゃそうなんだけど、要するに本作には、リアリティがなくストーリーに没入できない邦画となっている。
映像としてムードのない、良く言っても飾っていない、しかしだからと言って魅力もない作品である。
映画『鈍色のキヲク』インディーズ感と演技力の問題点
「インディーズ映画」だろうか?本作は大学の映画サークルが作ったような、序盤からそんな雰囲気が漂う。自主製作映画の延長線上といった印象で、全体的な完成度は非常に低い。
映像演出もカメラの構図も素人っぽいし、そして画面は全体的に暗くて見えにくい。自然光のみで、照明とか使ってない感じだ。低予算映画としても評価できない部分が多い。編集も稚拙で、シーンごとに不自然な間が挟まるのが目立つ。
役者の演技は下手である。総じてみんな下手である。この演技力の無さは視聴していてキツイ。棒読みの棒立ち、仕草や間の取り方、会話の掛け合いもぎこちない。表情の作り方も下手だ。演技と呼べないレベルに留まっている。客寄せのために出演したアイドルの拙い演技を批判する声はよく聞くが、それと比べても更に下の水準であり、素人を捕まえて演技指導した方がマシではないかと思えるほどである。
完全にインディーズだろう。いや、このクオリティでインディーズじゃなかったら、それはそれでヤバイ。
もちろん「インディーズだから悪い」ということはないが、しかし「インディーズだから許せる」ということもない。
こちらとしては、多くの映画を鑑賞しているわけだから、どうしても比べてしまう。それはもちろん商業作品が多いわけで、インディーズ作品がそれらと比べてどうしても見劣りしてしまうのはわかるが、だからといって甘く評価したりはしない。観たまんま、同列に並べて評価する。本作は、その基準を満たしていない。
しかしながら、メインキャストには元SKEの大矢真那やにしおかすみこなどが出演している。どこかで見た顔だなぁと思っていたら、そこそこ有名どころが居たりするのは不思議だ。まあ別に彼女たちの演技力も作品全体を支えるものではなく、下手なまんまなのだが。
総括として、高校生でこのクオリティならまあ凄い、大学生サークルならば妥当、大人が作ったんならその目的にもよるが、しかしAmazonで観られることを考えると、映画として成っていない。はっきり申し上げると、Amazonプライムで無料配信されている邦画ではあるが、なんだか損した気分だ。まぁでも「怖いもの見たさ」で視聴したわけだから、そういう意味では損ではないと考えるべきか。経験として割り切るしかないだろう。

他のレビューと世間の評価
本レビューを書き続けるかどうかを決めるにあたって、私は他の人の意見を参考にしようとインターネットを徘徊したが、見つかったのは2件だった。一つは私と同じように、演出の至らない点や演技面での酷評が辛辣に書かれていた。実に書かれている通りで、私は「やっぱりそうだよな」と、本レビューを書き出したことを少しばかり安心した。もう一人の方はご自身のブログにて一言「不愉快。」とだけの記述。私はその潔さに、思わず吹き出してしまった。
それでは、一体何が「不愉快」だったのだろうか?
※以下、映画『鈍色のキヲク』のネタバレを含みます。
低予算映画としても評価できない要素
まず前提として、本作は映画作品と呼べないレベルで稚拙である。低予算映画やインディーズ映画だからクオリティが低くても仕方ない、というわけではない。むしろ限られた予算のなかでも光る演出や独創性を見せる作品は数多く存在する。
しかし『鈍色のキヲク』は低予算映画としても評価できない部分が多すぎる。雑な編集、無理やり感動に持っていこうとする脚本、演技力のなさ――どれをとっても視聴者を物語に引き込む要素が見当たらない。
「こんな作品を見せるな」の不愉快さ
一つ目の可能性は「こんなものを見せやがって」の線だ。ハッキリ言って本作は映画未満の作品であると私は評価する。そんな低俗なものを見せられて「不愉快だ。」と感じたルート。これはあり得る。なんだか馬鹿にされている感も幾分かある。「こんな作品で視聴者が喜ぶとでも思ってるの?馬鹿にするな!」的な。その結果が「不愉快。」の一言だったのかもしれない。
感動ドラマ仕立ての押し付けが不愉快
二つ目に、本作はシナリオが幼稚であるにもかかわらず、「感動ドラマに仕立て上げよう」としている点だ。下心が透けて見えてしまい、それ自体が「不愉快。」だった線。
映画『鈍色のキヲク』は、主人公の笹元カナ(大矢真那)が自身の出生の秘密を知っていく物語なのだが、とにかく意味不明な描写が多い。カナの母(にしおかすみこ)は自分の父親を事故で死なせ、その罪を夫になすりつけて刑務所に送っている。それにもかかわらず、残された莫大な財産(母親の父親は大企業の取締役社長)で贅沢に暮らし、「カナの父は死んだ」と嘘をついて体裁を保ち続ける。その身勝手さは目に余る。極めつけは「カナだけは傷つけないで!」というセリフ。結局それはカナではなく自分のためであり、観ていて浅ましさしか感じなかった。
全部カナの母親のクズっぷりが原因であるのに、BGMでは感動的な雰囲気を漂わせ、父子はすれ違ったまま出会えず、カナの父親は涙を流して物語は幕を閉じる。なに無理くり感動ドラマに持っていこうとしてんの?全然感動的じゃないわ。確かに「不愉快。」である。
正直、私自身も視聴後は強いもやもやが残っていた。だがこうしてレビューにまとめることで少しは気持ちが整理できたように思う。少なくとも、Amazonプライムで観られるからといって「並みの映画作品である」とは限らないということを痛感させられた。
こんな人にオススメ!
正直、映画『鈍色のキヲク』は完成度の高い作品を求める人にはオススメできない。しかし、世の中には「駄作」と呼ばれる作品をあえて楽しむ層も存在する。そうした意味で、以下のような人には向いているかもしれない。
- 低予算映画やインディーズ映画の雰囲気を体感してみたい人
- 演技や演出の拙さも含めて「怖いもの見たさ」で楽しめる人
- Amazonプライムで無料だからこそ気軽に試し視聴したい人
総評:Amazonプライムで観られるが映画作品とは呼べない
映画『鈍色のキヲク』は、インディーズ作品や低予算映画の中でも特に粗が目立ち、演出・脚本・演技のいずれも映画としての完成度に欠けている。確かに有名キャストの出演があるものの、それを活かすこともできていない。Amazonプライムで配信されているからといって、必ずしも質の高い映画とは限らないことを改めて痛感させられる作品であった。
ただし、普段から映画を大量に観ている人にとっては比較対象として興味深いかもしれないし、映画未満の作品に触れることで「良い映画」とは何かを再確認できるという意味では、価値があるのかもしれない。そう考えてみれば、決して時間を無駄にしただけではないと締めくくっておこう。
映画『鈍色のキヲク(2019年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:渡邊豊
- 出演:大矢真那, 丸山龍星, 西尾舞生, 勇翔, 土田拓海, にしおかすみこ
- 公開年:2019年
- 上映時間:87分
- ジャンル:ドラマ, ミステリー