安定のアクション×コメディは健在!シリーズ未経験でも楽しめる
映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』感想レビュー
ゆるい空気と鋭いアクションのギャップで人気を集めてきた映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ。そんな二人組が帰ってきた本作『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』では、少し大人になったちさと(髙石あかり)とまひろ(伊澤彩織)が、新しい土地でちょっとした“お仕事”に挑む姿が描かれる。
今回の舞台は九州・宮崎県。のんびりとした風景の中で、二人らしいテンポの良いやり取りや、少し不器用だけど温かい関係性が描かれており、シリーズの魅力がさらに深まっているのが特徴的だ。アクションのキレと笑いのバランスも健在で、前作を知らなくても楽しめる一本となっている。

髙石あかり、伊澤彩織の最強コンビが帰ってきたシリーズ第三弾『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』。アクションのキレやコメディの軽妙さはそのままに、今回も二人が画面いっぱいに暴れまわる!
キャストにはおなじみの顔ぶれに加え、前田敦子、池松壮亮ら豪華俳優陣がストーリーを盛り上げていく。監督はシリーズを通してメガホンを取る阪元裕吾。独特のテンポとセンスが光り、笑ってスカッとできる仕上がりになっている。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は連作モノでありながら、過去作を視聴していなくても楽しめる構成のため、今回『ナイスデイズ』で初めて観た人にもシリーズ作品はオススメだ。髙石あかり×伊澤彩織コンビが気に入ってしまったという人は、ぜひ『ベイビーわるきゅーれ』および『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』も続けて鑑賞してみてほしい。
ドラマ化も果たした『ベイビーわるきゅーれ』シリーズだが、劇場版はこれで見納めか?皆のドタバタ劇が楽しみである。
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『ベイビ―わるきゅーれ ナイスデイズ』あらすじ
ちさとは相棒の誕生日を祝いたい気持ちを胸に、小さなサプライズを考えながらも、次の仕事へ向かうことに。だが、そこで出会った人物が、彼女たちの日常に少しだけ波風を立てる存在となる。
笑いとテンポの良さ、そしてシリーズらしい二人の掛け合いが心地よく、日常の中に潜むスリルと絆が描かれる。気楽に観られて、それでいて少し熱くなる物語である。
テンポの良さとアクションの迫力がさらに進化!
映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、前作から受け継がれるテンポの良さが健在である。冒頭から始まるアクションシーンはキレがあり、スピード感とリズムが抜群。そしてアクション→コメディ→アクション→コメディと交互に挟む構成の流れはシリーズらしい予定調和で、ファンにとっては安心感すら覚える展開だ。
見所である軽快で激しいアクションは、シリーズを通してメガホンを取る阪元裕吾監督の真骨頂であり、銃撃戦や格闘戦を演じるキャスト全員の動きが本格的で、まるで本当に戦っているかのようなリアリティがある。特に今作では、個別戦というよりも複数人を相手にした大規模な戦闘シーンが多く、その迫力はこれまでのシリーズでは類を見ないスケールの大きさを感じさせる。次々と襲ってくる敵役を千切っては投げ千切って鼻毛、そのスピード感とリズムの良さは視聴者の日ごろの鬱憤やストレスさえも解消させる勢いだ。
一方で、日常パートのコメディシーンも健在である。今回は宮崎県を舞台に、出張という名の小旅行を楽しむちさととまひろ。二人のゆるい掛け合いや自然体のやり取りが笑いを誘い、観ている側も思わず頬がゆるむ。激しいアクションとの緩急のコントラストが絶妙で、シリーズを初めて観る人でも楽しめるバランスとなっている。
さらに今回は前田敦子が新たにバディとして登場し、これまでにない掛け合いと会話劇が生まれて、絶妙な間合いのコメディセンスが作品全体をさらに盛り上げているのだ。
激しいアクションと軽やかなコメディ——この二つの要素が同時に成立しているのが『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』の魅力であり、まさに“阪元裕吾ワールド”の真髄といえる。
アクションの進化とシリーズの課題を考察
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、シリーズ三作目にしてますます勢いを増したアクションと笑いが炸裂する一作である。それでも三作品目となると、どうしても前作や前々作と比較してしまうもの。ここでは本作の「良かった点」と「残念に思った点」をそれぞれ挙げていく。
圧巻のアクション、伊澤彩織の身体能力が光る
まず特筆すべきは、さらに迫力を増したアクションシーンだ。まひろを演じる伊澤彩織はスタントパフォーマーとしても活躍しており、その身体能力と格闘技術は本作でさらに研ぎ澄まされている。特に序盤の海辺のシーンでは、「伊澤彩織の足の筋肉すっげ」ってなったのが記憶ポイントである。
また今作は、銃を使いながら体術で戦うという、日本映画では珍しい独特のアクションスタイルが展開されていた。殴り・蹴り・組み合いを繰り返しながら、至近距離で銃を撃ち合う「銃+体術」の融合アクションは、まさに阪元裕吾監督の真骨頂であり、他のアクション映画にはない唯一無二の見応えを生み出している。
さらには、ちさととまひろの敵役として登場する池松壮亮の存在感も圧倒的である。その繊細で自然体な演技で知られる彼だが、本作では激しい殺陣を披露。「えっ池松壮亮って殺陣できたの!?」という驚きとともに、スタントパフォーマーである伊澤彩織にも退けを取らない作中でのその強さはまさに最強のボスキャラとしてふさわしく、シリーズ全体を通しても屈指の緊迫感を誇る対決シーンである。
総じて、アクションの完成度は極めて高く、映像の勢い・構成のテンポ・演者の本気度すべてが噛み合った結果、三作目にふさわしい満足度を実現している。
シリーズのマンネリ化と惜しい部分
一方で、シリーズを重ねることによる“慣れ”や“パターン化”も感じられた。脚本はありきたりで中身は薄く、個性の強いキャラクターたちだけでは支え切れていない印象を受ける。クライマックスもこれまでと同様、銃撃戦のあとにまひろの素手による格闘戦というお決まりの展開に落ち着き、アクションの質は高いものの、構成面での新鮮さにはやや欠けた印象だ。
また、舞台設定にもやや違和感を覚える。真昼間のホテルの駐車場で大規模な銃撃戦が繰り広げられるのだが、一般客の存在が全く描かれず、リアリティの薄さが際立つ。エレベーターが何台も並ぶような大型ホテルでこの展開は、シリーズの“裏稼業もの”としての設定が少しぼやけてしまっていた。
全体的には派手さが増して見応えはあるが、現実感の欠如が気になる部分もある。とはいえ、アクションコメディ映画としては十分に楽しく、誇張表現も含めて“ベイビーわるきゅーれらしさ”と受け止めることもできる。惜しい点こそあるものの、シリーズの魅力を失うほどではないだろう。
結果として、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』はアクション面での進化と、シリーズとしての限界点が同時に見える興味深い作品である。阪元裕吾監督の演出とキャストの熱量が作り上げた、完成度の高い一本であることに変わりはない。
ベイビーわるきゅーれは終わるのか?『ナイスデイズ』で見えたシリーズの区切り
映画『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』を観終えて、まず頭に浮かんだのは「これでシリーズは終わりなのか?」という疑問である。シリーズ第1作から続いてきた、ちさととまひろの“ゆるくて真剣な日常”が、この『ナイスデイズ』でひとつの節目を迎えたようにも感じられる。もちろん、公式には「最終作」という発表はされていない。しかしながら、作品の中に散りばめられた演出やキャラクターの変化から、「これで一区切りなのかもしれない」と思わせる要素がいつくかある。
キャラクターの成長が示す“一区切り”
これまでのシリーズでは、二人の凹凸コンビっぷりや日常のドタバタ劇が中心に描かれてきた。だが『ナイスデイズ』では、ちさととまひろの関係がより穏やかで、互いに信頼し合う姿がこれまで以上に際立っている。軽口を叩きながらも、お互いのことを理解している空気があり、まるで“最終章”を思わせる落ち着きがあるのだ。日常の延長線上に少しだけ成長が見える——この描き方自体が、シリーズ全体を通しての締めくくりのようにも感じられる。
ストーリー構成にも完結感
『ナイスデイズ』は、これまでのシリーズで描かれてきた世界観を引き継ぎつつも、物語の収束点として整理された構成となっている。大きな伏線を残さず、登場人物たちがそれぞれのペースで日常へ戻っていく流れは、「この世界はまだまだ続くけれど、物語としてはここで一息つく」と言わんばかりである。
それでも“続き”を期待したくなる
とはいえ、ちさととまひろのコンビが築いてきた空気感は唯一無二であり、ファンとしては「またどこかで彼女たちに会いたい」と思わずにはいられない。物語としては区切りを感じさせながらも、日常はまだどこかで続いているような余韻を残して終わる。その“続きがありそうでない”絶妙な終わり方が、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズらしさでもある。
まとめ
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、シリーズの完結を明言していないが、物語とはしては明確に一区切りを感じさせる作品である。ちさととまひろの成長、世界観の落ち着き、物語の構成——そのどれもが「終わり」を意識させる一方で、「まだ観ていたい」という感情も強く残る。しかし、三作品目ということで区切りも良い。また、ちさと役の髙石あかりが2025年度後期のNHK「連続テレビ小説」『ばけばけ』で主演を務めていることもあり、たとえ続編が作られてもかなり先だろう。それでも、ファンとしてはまた彼女らの活躍を期待したいばかりである。
こんな人にオススメ!
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、アクション映画としての爽快感とコメディとしての軽妙さが絶妙に共存している作品である。シリーズ経験者はもちろん、初めて視聴する人でも世界観に入りやすい作りになっているため、幅広い層にオススメできる作品である。
- スピード感のあるアクションや格闘シーンが好きな人
- キャラクターの掛け合いやテンポの良い会話劇を楽しみたい人
- 笑いと緊張感のバランスが取れた邦画を探している人
- 髙石あかり・伊澤彩織・前田敦子・池松壮亮など出演陣の演技を堪能したい人
- 阪元裕吾監督の作風が好き、または気になる人
アクションの迫力だけでなく、登場人物たちの素朴な日常や人間味にも惹かれる作品である。激しさの中にある“ゆるさ”こそが、このシリーズの真骨頂だろう。
シリーズの魅力は、日常と非日常の境界にある
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、シリーズ3作目として見事に進化を遂げつつも、どこか原点回帰のような雰囲気も持っている。ちさととまひろの関係性はより深まり、日常の中にある非日常が、これまで以上にその存在を放つ。
もしこの作品がシリーズの一区切りとなるとしても、それは“終わり”ではなく、“これまでの集大成”として受け止めるのがふさわしいだろう。激しいアクションに笑って癒され、最後は少しだけ胸が熱くなる――そんな感覚を味わわせてくれる映画である。
『ベイビーわるきゅーれ』シリーズを通して描かれてきたのは、派手なアクション的な強さだけでなく、「人と人とのつながり」だ。笑い、戦い、そして少し成長する。そんな彼女たちの物語は、これからも心のどこかで続いていくように思える。
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映画『ベイビ―わるきゅーれ ナイスデイズ(2024年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:阪元裕吾
- 出演:髙石あかり, 伊澤彩織, 水石亜飛夢, 中井友望, 飛永 翼(ラバーガール), 大谷主水, かいばしら, カルマ, Mr.バニー, 前田敦子, 池松壮亮
- 公開年:2024年
- 上映時間:112分
- ジャンル:アクション, コメディ