🏞他県ディスに本気で情熱を燃やす!
映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』感想・レビュー|壮大すぎる地域ディス茶番劇
映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』は、2019年に公開され話題をさらった『翔んで埼玉』の正式な続編であり、地域対立・郷土愛・過剰なディス表現を極限までエンタメ化したコメディ映画である。 本作では舞台を関東から関西へと移し、琵琶湖を中心に滋賀・大阪・京都・兵庫を巻き込んだ、さらにスケールの大きい茶番劇が展開される。
物語の軸となるのは、前作から続投となるGACKT(麻実麗役)と二階堂ふみ(壇ノ浦百美役)のコンビ。 GACKTは大阪府堺市出身のミュージシャン・俳優、二階堂ふみは沖縄県出身の女優であり、いずれも実際の出身地と劇中での「地域意識」とのズレが、このシリーズ特有の笑いを生み出している。
続編となる本作では、関西側キャストの顔ぶれも一気に強化された。 藤原紀香(兵庫県西宮市出身)は神戸市長役として登場し、圧倒的な存在感で兵庫県の誇りを体現する。 さらに片岡愛之助(大阪府出身)が大阪府知事、川崎麻世(京都市出身)が京都市長を演じるなど、関西各地の象徴的ポジションを実際の出身者が担う構図を徹底。滋賀解放戦線のリーダーには杏が配され、物語は琵琶湖を巡る“どうかしているレベルの地域抗争”へと突入していく。
キャストの出身地と役柄を意図的に重ね合わせる演出は、本作のギャグ構造そのものと言ってよい。 郷土愛を誇張し、差別と偏見を笑いへと変換するこの手法こそが、『翔んで埼玉』シリーズ最大の特徴であり、本作でもその方向性は一切ブレていない。

私はGACKTが好きである。いつかのレビューでも申し上げた気がする。
そんなGACKTに釣られ、前作『翔んで埼玉』は視聴していたが、続編は観ていなかったため、Amazonプライムビデオで見放題になっており、んだらばと再生ボタンを押したのだ。
本作は、元をたどれば1982年から連載されていた魔夜峰央による漫画である。埼玉県を「ディスる」ことから映画製作は難航したそうだが、作中の内容は最終的に郷土愛を描くため、公開当時は映画に対するクレームは少なかったそうだ。興収は38億円とそれなりに成功をおさめ、それなりの評価を得た。
『翔んで埼玉』の特徴は、その”茶番劇を壮大に行う”というものであり、続編の『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』でその壮大さはさらに極まっている。無駄に壮大なストーリー、無駄に壮大な展開、無駄に壮大なVFX。そしてGACKTはカッコイイ。
私の期待を裏切らず、良い意味で予想を上回る”茶番劇を壮大に行う”ことを見せてくれた、ギャグに吹っ切った作品である。
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『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』あらすじ
埼玉の戦いで培われた“地域ディスり”と無駄に壮大な思想は、関西の地でも容赦なく炸裂する。やがて琵琶湖を中心とした争いは、単なる地域抗争を超え、関西全体を巻き込む騒動へと発展していく。 本作は、地域愛と自虐を過剰なまでにエンタメ化しながら、日本各地に潜む「見えない序列」を笑い飛ばす続編である。
とにかく振り切った演出と世界観|『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』の魅力
本作『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』は、ストーリー、演出、脚色のすべてが極端なまでに振り切れているコメディ映画だ。 他県ディスをまるで民族紛争の如く描き、漫画からそのまま飛び出してきたかのような舞台美術や衣装設定、さらには実在する県民あるあるを誇張して壮大に描写していく。
そのくだらなさが、一周回ってオモシロイ。
漫画やアニメ原作の実写映画は、キャラクターが浮いてしまったり、安っぽいコスプレ感が出てしまったりと酷評されがちだ。 しかし本作に関しては、その「嘘っぽさ」そのものが作品の作風と異常なほど噛み合っており、むしろ大きな武器として機能している。
俳優陣の演技やVFXも、決してシリアスではなく、どこかチープでわざとらしい。 だがそれは下手なのではなく、嘘っぽく見えるように、本気で演じ、本気で演出しているからこそ成立している表現である。
そのバランス感覚が、実に妙で巧みだ。
さらに味付けとして、控えめながらBL的要素も含まれている。 しかし主人公を演じるGACKTを中心に、その相手役が男性ではなく二階堂ふみや杏といった女性キャストであるため、観ていてややこしいが、それがまた本作特有の可笑しさを生んでいる。
配役については、出身地を意識したキャスティングがなされているものの、主演を含め一部は実際の出身地と異なる。 しかし前作からの流れやキャラクターイメージを考えれば、ここは細かく突っ込む部分ではなく、素直に受け入れるべき点だろう。
本作は、真面目に鑑賞するタイプの映画ではない。 だが、本気でコメディとしてギャグに向き合った作品であり、その意味では間違いなく力作である。 重たい映画やシリアスな作品を立て続けに観て疲れてしまった時の息抜きとして、非常にちょうど良い一本だ。
前作『翔んで埼玉』は観ておくべき?続編からでも楽しめるか
本作の視聴を迷っている人が気になるのは、やはり前作『翔んで埼玉』を観ておく必要があるかどうかだろう。 結論から言えば、前作未視聴でもOKだ。 ストーリーは地続きではなく、本作単体でも楽しめる構成になっている。
ただし、前作と本作のどちらが面白いかと問われれば、個人的な評価は前作が良き。そのため本作を観る前提知識としてというよりも、単純に「面白い映画」として、前作『翔んで埼玉』はぜひ一度観てほしい作品である。
GACKTという存在感|出身地対決『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』の魅力
本作『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』の魅力は、なんといってもGACKTの存在だろう。 その容姿、声、雰囲気、そして男でありながらどこか艶やか。 私がこのシリーズを観るキッカケとなったのがGACKTだったし、正直に言って、彼がいなくては本作は成り立たないだろう。前作『翔んで埼玉』でも、その圧倒的なカリスマ性を遺憾なく発揮し、日本全国のGACKTファンを虜にした。
GACKTカッコイイよGACKT。
そうは言っても、推しが出演しているからという理由だけで、私は映画を高評価にはしない。映画としてきちんと完成されていてこその評価である。 その点においても、本作は間違いなく「面白い映画」だと言える。
面白さの大きな要因の一つが、「壮大な茶番劇を本気でやり切る」という姿勢であるが、 なかでも出身地俳優対決は、この作品を語るうえで欠かせない名物要素だ。
映像を観ての通り、俳優の出身地で優劣をつけようという無茶な企画である。 この出身地対決は前作にも登場しており、もはや『翔んで埼玉』シリーズの名物と言っていい。 三作目が製作されることがあれば、ぜひまた見てみたい要素だ。
予告動画でも「アイドル界の問題児」など、かなり容赦のないディスりも飛び出す。「いや、何年前の話やねん!」と私は思わずツッコミを入れたが、もちろんこれだけでは終わらない。
続々と各都道府県を代表する著名人や有名人が登場し、なかでもメタい演出には爆笑した。これは文章で説明するよりも、ぜひ本編で体験してほしいポイントだ。 笑いのために、ここまでやるのかと思わせる振り切り方だ。
とにかく全体のメーターが振り切れていて痛快である。 面白さのためなら手段を選ばず、出し惜しみをせず、批判を恐れない。 その姿勢こそが、『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』を唯一無二の作品にしている最大の要因だろう。
もし『翔んで埼玉』続編の舞台が地元だったら?出身地対決を本気で考えてみる
ここまで振り切った映画を観ていると、そうして考える私である。
「もしさらに続編が製作され、その舞台が私の地元だったら、出身地対決はどうなるのか?」
『翔んで埼玉』シリーズ名物の“出身地俳優対決”を、自分の県に当てはめて妄想してみることにした。
広末涼子
……。いじりずらい!!!
いや、近年ちょっと語りにくいですハイ。10代の頃とか映画『おくりびと』の時ならば……!
流石に使えませんね。ちなみにご本人と妹さん、あとご家族も拝見したことはあります。
高知東生
正直、個人的には良い印象を持たない。 県出身の著名人として名前を見かけるたび、少し複雑な気持ちになる、というのが率直なところ。
LINEニュースなどでコメントを目にすることもあるが、そのたびに 「この人の発言を、地元の声として受け取られてしまわないだろうか」 と、余計な心配をしてしまう自分がいる。
もちろん、それも一方的な受け取り方に過ぎない。 生活のため、仕事として発言の場に立っているのだろうし、そこを責めるつもりはない。
ただ、もし別名義で活動していたら、ここまで意識せずに済んだのかもしれない、とは思ってしまう。
ちなみに見かけたことはある。高島礼子も。
やなせたかし
誇れるうううううう!!!アンパンマンだよ!!
国民的キャラクターの生みの親であり、朝ドラのモデルにもなった人物。 街中の至るところで、やなせたかし、もしくはアンパンマンを見かけることができる。 ドヤ顔していい枠だ。
島崎和歌子
うん……ちょっと弱いか?
有名かな? 有名だよね? 有名ではある。ただしインパクト勝負となると、やや心許ない。 ちなみに酒癖が悪いのは、地元でもそこそこ有名。
坂本龍馬
YES!!!
幕末の志士として、日本史上でも屈指の知名度を誇る存在である。教科書からの扱いはやや縮小されたものの、今なお人気は衰えておらず、海外での知名度も高い。
剣は北辰一刀流、愛刀は陸奥守吉行。キャラクター性・象徴性ともに、出身地対決では文句なしの切り札だろう。
藤川球児
Say!!!
元プロ野球選手であり、阪神タイガースの絶対的守護神として名を馳せた人物。ストレート一本でねじ伏せる投球スタイルは、全国的な知名度を誇る。
スポーツ枠を一気に巻き込める存在としては十分強い。 個人的にはそこまで詳しくないが、「タイガース」「火の玉ストレート」「優勝パレード」あたりの単語は分かる。
こうして並べてみると、意外と勝負できなくはない気もする。ほかにも間寛平、吉田茂、中村里帆など名前は挙がる。
ただ、やはり坂本龍馬・やなせたかし級が、もう一人二人欲しい。
ちなみに私自身?
箸にも棒にも掛からないです。はい。
……人のことを評価している場合ではないな。
こんな人にオススメ!
映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』は、万人向けの作品ではない。 しかし、ハマる人にはとことん刺さる、非常に分かりやすいタイプのエンタメ映画だ。
- シリアスな映画や重たいテーマに少し疲れている人
- 理屈よりも勢いとノリを重視したコメディが好きな人
- 地域ネタ・ご当地ネタ・自虐ギャグに笑える人
- GACKTという存在そのものを楽しめる人
- 映画に「くだらなさ」を求められる人
逆に、リアリティや整合性、深いテーマ性を映画に求める人には、あまり向かないかもしれない。 本作は考察する映画ではなく、笑って流す映画である。
くだらなさを全力でやり切った、だからこそ成立する映画
『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』は、地域ディスという扱いづらい題材を、 中途半端な覚悟ではなく、全力で茶番としてやり切った稀有な作品である。
笑わせるためにここまで振り切るのか、と思う場面も多い。 だが、その出し惜しみのなさ、批判を恐れない姿勢こそが、このシリーズ最大の魅力だろう。
映画としての完成度や整った脚本を期待すると肩透かしを食らうかもしれない。 しかし、「くだらないことを本気でやる映画」を求めているなら、これ以上なく適した一本である。
深く考えず、気楽に笑いたい夜に。 あるいは、何も考えずにGACKTのカリスマを浴びたい時に。 そんな用途に、これ以上ないほどちょうどいい映画であった。
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映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜(2023年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:武内英樹
- 出演:GACKT, 二階堂ふみ, 杏, 片岡愛之助, 加藤諒, 益若つばさ, 堀田真由, くっきー!(野性爆弾), 高橋メアリージュン, 和久井映見, アキラ100%, 朝日奈央, 天童よしみ, 山村紅葉, モモコ(ハイヒール), 川﨑麻世, 藤原紀香
- 公開年:2023年
- 上映時間:116分
- ジャンル:コメディ