監督・脚本は福田雄一が務め、舞台は原案と同じくハワイ・オアフ島での撮影を中心としている。
主演は山田孝之と長澤まさみで、短期記憶障害の女性と彼女に恋する男性の関係を描く。
👩❤️💋👨ありがちな設定を最強タッグと笑いでリメイク!
映画『50回目のファーストキス』感想レビュー|日本リメイク版
日本リメイク版『50回目のファーストキス』は、2004年に公開された海外映画『50 First Dates』を原作とした作品である。 主演は山田孝之と長澤まさみ。監督はヒットメーカー・福田雄一。舞台はハワイを中心に、基本設定は原作を踏襲している。
一晩眠ると記憶がリセットされてしまう女性と、 その事実を受け入れたうえで、毎日一から関係を築こうとする男。 本作は、この切ない特殊な前提をもとにした恋愛を、日本映画としてどう語り直したかが問われるリメイクである。
『50回目のファーストキス』の日本リメイク版。本家である海外版『50 First Dates』は未視聴である。恋愛映画が観たい気分だったのと、かつ私は俳優・山田孝之が好きという理由から、日本版をチョイス。面白ければ原作映画も観てみよう、という軽い動機だった。
記憶障害と恋愛。ベタではあるが鉄壁だ。いかにもお涙頂戴の感動系の純愛ラブストーリーを想像していた。
そう思っていたら違った。本作はしっとり泣かせる映画ではなく、ゴリゴリのコメディだった。
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『50回目のファーストキス』あらすじ
彼女は毎朝、昨日までの出来事をすべて忘れて目を覚ます。
そんな彼女と出会った男は、その事実を知りながらも惹かれていく。 しかし普通の恋愛のように、思い出を積み重ねることはできない。 男は毎日、彼女に出会い直し、 毎日、関係を一から築くという選択をする。
記憶は残らない。 それでも、同じ一日を何度も繰り返す中で、 二人の関係は少しずつ形を変えていく。
ベタな記憶障害モノ?──他作品と比べて分かる『50回目のファーストキス』の立ち位置
一晩寝ると記憶が消えてしまう――。これは古くから愛され、数多くの名作で擦られ続けてきた題材である。パッと思いつくだけでも、名作『博士の愛した数式』や、近年のヒット作『今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ)』などが頭に浮かぶ。もっとも、公開順でいえば『セカコイ』の方が『50回目のファーストキス』より後なのだが。
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しかしながら本作は、これら先行する(あるいは後続の)感動作とは一線を画す。じんわりと心に刻まれる「純の涙」を誘うのが『博士の愛した数式』や『セカコイ』だとすれば、日本版『50回目のファーストキス』は、コメディ要素をふんだんにあしらった「笑いと幸せ」の恋愛映画である。
もちろん、”記憶を失う”という切ない設定ゆえ、涙腺を刺激されるシーンも用意されている。だが、それらと肩を並べるほどに笑いの打率が高いのだ。一般的な「ラブコメ」といえば、ロマンス7割:コメディ3割程度のバランスが多いが、本作は体感的に5:5に近い。この配分が、泣かせに振り切らず、あくまで“気持ちよく笑わせる映画”として成立させている。
”本当の”ラブコメという印象を受けた。
ストーリー展開も軽快で全体的に足取りは軽い。重くなりくなりがちな「記憶障害」というテーマを過度にシリアスに描きすぎず、ごく自然にエンターテインメントとして物語に溶け込ませているのが好印象だ。
また、ハワイというロケーションを活かした演出も美しい。透き通るような海はもちろん、印象的な夜空の星々。さらに意外だったのが、街の夜景だ。ハワイって意外と高い建物があるんだなぁ。高層ビルが立ち並ぶ都会的なきらめきが、夜空の輝きとは対照的な美しさで見ものだった。
登場人物に嫌な役回りもおらず、視聴していて終始負の感情を抱くことはのも本作の魅力だ。とにかく気持ちよく笑えて、気持ちよくロマンスに浸れる。
重すぎる映画を避けてリフレッシュしたい時や、涙腺が疲れて「ちょっぴりの切なさと元気」を補給したい時に、最適な一本と言えるだろう。
福田雄一×山田孝之が贈る「ギリギリを攻める」絶妙なコメディ演出
本作『50回目のファーストキス』の見どころと言えば、やはりロマンス……と言いたいところだが、あえて「コメディ」を推したい。何を隠そう、何も隠していないが演出を手掛けるのは笑いの巨匠、福田雄一監督である。
福田監督といえば、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(山田孝之主演)をはじめ、『銀魂』や『今日から俺は!!』などを手掛けるコメディ界のヒットメーカー。特に主演の山田孝之とは公私ともに親交が深いらしく、この二人がタッグを組むと、「とにかくふざけ倒す」「シュールな笑いをぶち込んでくる」のがお約束だ。
本作では、コメディー要素が絶妙でうざったくないのが好印象だ。本作でもその味は健在だが、コメディ要素が絶妙な塩梅で「うざったくない」のが好印象だった。マジでロマンス映画として許されるギリギリのラインを攻めており、行き過ぎて冷めるということがなかった。
また、山田孝之はもちろんのこと、脇を固める佐藤二朗と仲野太賀のボケとツッコミのやり取りも巧みである。佐藤二朗も私の好きな俳優の一人だが、シリアスなシーンに唐突にユーモアを差し込んでくるあの空気感は、まさに「流石」の一言に尽きる。
大人の恋愛としての説得力
本作はコメディ色が強い一方で、ロマンス映画としての見どころもしっかり押さえている。恋人役を演じる山田孝之と長澤まさみは、役柄としても実年齢としても成熟した大人であり、その分、恋愛描写には情熱と説得力があった。
同じく記憶障害下の恋愛を描く『今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ)』と比べると、本作のほうが互いへの恋慕をストレートに、熱量高く表現している印象を受ける。それでもヒロイン・瑠衣の「一日限りの記憶」という制約が、恋の熱をさらに燃え上がらせていく。
例えるなら、燃え盛る火に薪を次々とくべていくような感覚だ。アッチィ!!
普通の恋愛映画であれば、出会い、恋に落ち、すれ違いを経て困難を乗り越える、みたいなストーリーテリングだろうが、しかし本作では、記憶障害という設定があることで、毎日が新鮮な「恋の始まり」として描かれる。視聴者は何度も、恋が立ち上がる瞬間を目撃することになる。
「一日限り」というハンデを、表現上の武器へと転換した巧みな構成だろう。リメイク作品ではあるが、その設定を活かす使い方は実に上手い。
『セカコイ』は似ている?それとも――既視感の正体を考える
※ここから『50回目のファーストキス』『今夜、世界からこの恋が消えても』のネタバレを含みます。
ここで、どうしても触れておきたいのが『今夜、世界からこの恋が消えても(セカコイ)』との類似性である。ありていに言えば、「セカコイが『50回目のファーストキス』に似ている」と感じてしまう点だ。
ここまで何度も『セカコイ』の名前を私が出してきたのは、この話題への伏線でもあった。つまるところ、私の頭をよぎるのはこういう疑問である。
”『セカコイ』はパクリなのだろうか?”
一晩眠ると記憶を失うヒロイン。この設定自体は、フィクションとして決して珍しいものではない。実際、記憶障害は現実にも存在するし、それを恋愛物語の軸に据える発想も理解できる。
しかし、どうしても腑に落ちない点がある。『50回目のファーストキス』と『セカコイ』の双方で描かれる、「記憶にないはずの人物の肖像を描き続ける」という行為だ。
偶然にしては、出来過ぎている。
そこで調べてみた。記憶障害を持つ人が、無意識に特定の人物や物を描き続けるという症例が、医学的に一般的なのかどうか。
「記憶障害そのものによって、無意識的に特定の人物・物を淡々と書き続ける」という行動が、医学的に『典型的な症状として頻繁に起こる』という証拠は存在しない。 ただし、脳障害や実行機能障害によって特定の繰り返し行動(=反復行動/パーシビレーション)が出ることは知られている。
引用:Perseveration | Description, Neurological Mechanisms, Types, & Treatment | Britannica
正直に言うと、少しショックだった。『セカコイ』は私にとって、人生ベスト級の映画だからだ。トップ5には入る。精神的続編小説である『今夜、世界からこの涙が消えても』まで読んだほど、思い入れがあるのだ。
その『今夜、世界からこの恋が消えても』が、パクリ?
果たして、これは盗用なのか。結論から申し上げれば、ブログを書く上で整理していくと、個人的にはそうは思っていない。むしろ、物語構造として非常に強い型を、理解した上で使っているのだと感じている。
意図的な参照でありながら、オマージュとしては明示しない。作品内でも説明しない。感情を動かす装置として真っ直ぐに置く。ただ、その「隠し方」が、かえって既視感を強めてしまっているのだ。
実際、ネット検索するとしばしば出てくる。ヤフー知恵袋では「似てないですか?」とか、個人ブログでも「似すぎている」という感想はある。それでも――
別物だ。
作り手側の感覚としては、「構造は同じでも物語は違う」という認識なのだろう。しかし、構造を見抜いてしまった視聴者には、「またこの装置を踏まされている」という感覚が残る。これが、別作品でありながら私の感じた違和感の正体なのではないだろうか。
さらに、決定的に違うのは使い方である。『セカコイ』が記憶障害を徹底して泣かせる装置として用いているのに対し、『50回目のファーストキス』は、それを笑いと恋を前進させるエンジンとして扱っている。
結末も、テーマも、観客に残す感情もまったく異なる。似ている。しかし、同じではない。
先行作品である『50回目のファーストキス』の影響を、後発作品がまったく受けていないと考える方が不自然だろう。ただしそれは、作品の価値を否定する話ではない。
「記憶には残らないが、行動には現れる」。その表現が要求する到達点が、似た形を取った――そう考えるのが、今のところ最も腑に落ちている。
こんな人にオススメ!
本作『50回目のファーストキス』は、ただのラブストーリーではない。笑って、少し考えて、最後にはちゃんと温度のある余韻が残る映画である。特に、以下のような人には刺さりやすい。
- 恋愛映画は好きだが、ベタすぎる展開には少し食傷気味な人
- 泣かせ一辺倒ではなく、笑いと感情のバランスが取れた作品を観たい人
- 記憶や時間、関係性といったテーマに興味がある人
忘れられても、好きになる理由
日本リメイク版『50回目のファーストキス』は、記憶が失われるという過酷な設定を用いながらも、決して重くなりすぎない。むしろ、その制約を笑いとロマンスに変換し、「それでも恋は続いていく」という前向きな物語として成立させている。
似ている作品があるからこそ比較してしまうし、既視感を覚える部分もある。しかし、それを承知の上で観てもなお、この映画には独自の温度と着地点がある。何度忘れられても、何度でも好きになる。その反復そのものが、この映画の核心なのだろう。
軽やかに観られて、意外と深く残る。そんな一本を探しているなら、本作はちょうどいい選択肢である。
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映画『50回目のファーストキス』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:福田雄一
- 出演:山田孝之, 長澤まさみ, ムロツヨシ, 勝矢, 太賀, 山崎紘菜, 大和田伸也, 佐藤二朗
- 公開年:2018年
- 上映時間:113分
- ジャンル:ロマンス, コメディ

