10年越しのからかいが動き出す|実写版レビュー
―映画『からかい上手の高木さん』大人気ラブコメが映画化―
山本崇一朗原作の人気ラブコメ漫画「からかい上手の高木さん」。思春期真っ只中の男子中学生・西片と、クラスメイトの女生徒・高木さんによる甘酸っぱい“からかい”を描いた物語である。
漫画がアニメ化され、人気を博したことで劇場アニメ化、実写ドラマ化を果たし、そしてついに実写映画化された。
中学からの10年後を舞台にした実写化作品、映画『からかい上手の高木さん』。
大人になった西片と高木さんの“再会”が描かれる本作は、青春時代のときめきと、時を経て再び蘇る初恋の感情を瑞々しく映し出す。
私は原作未読であり、アニメは1期・2期・3期・劇場版を視聴済。ドラマ版は未見である。
この記事では、映画『からかい上手の高木さん』のあらすじと見どころ、原作やアニメ、ドラマを知らなくても本作は楽しめるのか? そういう人もいるだろうから、そのあたりも踏まえてレビューしていこう。
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映画『からかい上手の高木さん』あらすじ
それから十年の歳月が流れ、西片は母校で体育教師として働いていた。
ある日、教育実習生として現れたのは、かつて隣の席で笑っていた高木さんだった。
思いがけない再会に、懐かしさと戸惑いが交錯する二人。
大人になった今も、どこかあの頃のような距離感で、さりげないやりとりが始まっていく。
教師と実習生という立場の中で、互いの心に残っていた「からかい」が、再び静かに動き出す。
映画『からかい上手の高木さん』レビュー:テンポと会話シーンの評価
上映時間は120分と区切りは良いが、私は全体のテンポがやや悪いと感じた。カット編集のリズムなのか、それともストーリー展開そのものに精彩がないのか。引き込まれる勢いに欠けていた印象だ。
特に後半のほとんどが会話劇で構成されているため、メリハリがなく単調に感じた。その会話内容も、説明くさく淡々としすぎていて、ラブコメ特有のドキドキ感や“ときめき”が薄く、グダグダとしていた感は否めない。
また、”密かな恋心をからかいに込める”というのがウリの話なのに、そのからかいにキレがない。まぁ大人になったからというのもあるのだろうが、からかうにしても設定年齢25歳がそんなからかい方をするかなぁという印象。からかわれた方も、25歳にもなってそんな照れ方するかなぁというフィールな私である。
しかしながら、序盤はアニメ版の記憶とリンクする瞬間があり、視聴中にコッチまで恥ずかしくなるというか、甘酸っぱい初恋のむずがゆさが蘇る。映画ならではの実写表現が重なり、アニメファンにとって懐かしさを感じられるポイントは十分にあるといえる。
たまたまなのだが、私が学生の時に初めて付き合った女性と小豆島に旅行したことがあって、そして映画『からかい上手の高木さん』のロケ地も小豆島。懐かしい情景と自身の思い出が相まって、こそばゆい感覚をより一層強く味わった。映画『からかい上手の高木さん』は、そんなふうに私自身の思い出と重なり合うことで特別な体験を与えてくれた。
総じて、テンポや会話シーンには好みが分かれる部分があるが、「初恋の感覚をもう一度味わいたい人」にはおすすめできる実写映画である。
キャスト評価:高橋文哉と永野芽郁の再現度と共感
キャストに関しては申し分ない。西片(高橋文哉)も高木さん(永野芽郁)も、アニメの2人が成長したイメージにぴったり。(ドラマの方は視聴していないので割愛)
特に西片役の高橋文哉は、ルックスの雰囲気が原作イメージに近いだけでなく、本人も原作をよく研究しているなぁという印象を受けた。声のトーン(私のアニメ準拠だが)やリアクションの取り方がダブって見えて、アニメ版の西片と重なる場面が多い。まるで二次元から出てきたようだった。
高木さんについては、「あ、どっかで見たことある顔だな」なんて思っていたら永野芽郁その人であった。変わるものである。改めて演技力の幅を実感した。個人的には『君の膵臓をたべたい』を視聴した後に『思い、思われ、ふり、ふられ』で浜辺美波を見た時くらいの感覚だった。ちょっと言い過ぎか?ま、それくらい気が付かなかったということだ。少々言い過ぎかもしれないが、それほど役に馴染んでいたということだろう。私はゴシップに興味はないが、もうちょっと関心を待てばとも思う。なお、過去にレビューした永野芽郁出演作はコチラ ▼
印象に残った台詞とブログ執筆への共感
印象に残った高木さんの台詞がある。
「純粋に描きたいから描く、みたいなことが出来なくなっちゃったんだよね。」
高木さんは美術教師として、西片が勤める母校に教育実習にくるのだが、この言葉を一人の生徒に語りかける。ストーリーの本筋に深く絡む場面ではないが、私はこの台詞に強く共感させられた。むしろ映画レビューを書いている、今の自分の気持ちと重なったのだ。
私はブログを書いている。今もこうして、だ。いままでにいくつもブログを作っては消し、作っては消しを繰り返してきた。ある程度ブログが育ってくると、いつも考えてしまう。「ただ自由にブログを書きたかっただけだったのに」と。
当初はただ書きたくて始めたブログも、PV(アクセス数)が気になったり、変にマネタイズして収益が気になってしまったりする。本当は違う表現方法を用いたいのに、SEOを意識して検索され易い表現を使ってしまう。どんどん書くことが窮屈になっていくのだ。
このブログもまた、そうした葛藤の中にある。本来は映画を視聴した後、Amazonレビューに気ままに書き溜めていたものだった。それをブログにした形だ。映画を見た後にその感想を書くと、よりその映画を理解できて、ただ観るだけなのと比べて格段に満足度が高まる――その意気が出発点である。
しかしブログを公開している以上、私には「人に読まれたい」という欲もある。「読み手に届く記事を書くのか、自分が書きたい記事を書くのか」、その相克は常に付きまとう。最初は見出しすら付けていなかったのに、いつの間にか検索やアクセスを気にして書くようになっているのだ。
だからこそ、映画『からかい上手の高木さん』の言葉にハッとさせられた。Googleの為に書いているのではない。私は私のために書いているのだ。「純粋に書く」ことを忘れずにいたい――そんな初心を思い出させてくれる台詞だった。――自分語り終わり。
アニメ版と映画版の違い:「からかい」の意味の変化
アニメ版「からかい上手の高木さん」と映画『からかい上手の高木さん』との、からかい要素の違いについて述べよう。両者には大きな違いがある。それはストーリーの核ともいえる「からかい」の意味合いである。なお、以下はすべて私個人の見解である。
アニメでは、高木さんの”からかい”が青春の甘酸っぱさを象徴している。
対して映画では、恋慕が先にあって、それを”からかい”で表現していた。
ここに大きな違いがあって、アニメでは高木さんの想いは”からかい”という照れ隠しによって隠されているため多くは語られない。西片はいつもいつも翻弄される側で、幼さゆえ仕返しを試みることばかりに夢中になり、高木さんの気持ちや自身の気持ちにさえ気が付かない。
大人になってからの“からかい”は、特に高木さんは信頼の証として、気持ちも含めて変わらない2人という意味を込められているように私は感じた。
どちらの作品も共通して「もうお前ら付き合っちまえよ」と視聴者を焦らす感情を呼び起こさせるが、映画『からかい上手の高木さん』ではすでに2人が強い絆で結びついていて、それを確認しあっている、ように感じた。
映画『からかい上手の高木さん』初見でも楽しめる? 予習の有無と理解度
では、アニメ版やドラマ版を視聴していなくても実写映画『からかい上手の高木さん』は楽しめるのか。結論から言えば、「楽しめる」とは言える。しかし、より深く物語を味わいたいなら、やはり事前視聴をオススメする。
本作は、中学生時代から10年後の西片と高木さんを描いている。一応、映画の冒頭で2人の関係性を簡単に回想の形で説明してくれるが、さすがに見視聴だと十分に入り込めないように思う。
前述した通り、特に”からかい”のやり取りの中に2人の過去の関係が現れるので、それを踏まえてこそ深い味わいを感じることができよう。中学生時代のエピソードを知っているかどうかで、映画の受け取り方は大きく変わるはずだ。ぜひ全体の本編といえる中学生の頃を物語を、アニメでもドラマでも、あるいは原作漫画でも良いから予習してほしい。
そして、10年後を描かれるのは何も西片と高木さんだけではない。中学時代にはすでに付き合っていたあの男女が現在どうなっているのか、415(”良い恋”の語呂合わせ)段の階段のジンクスが今も語り継がれている様子などなど、シリーズを知る人には懐かしさを感じる要素が随所に盛り込まれている。
したがって、初見でも物語は理解できるが、最大限楽しむには過去作を見てから臨むのがベストである。とくにアニメ版はテンポ良く2人の関係が描かれているため、予習に最適だ。
こんな人にオススメ!
映画『からかい上手の高木さん』は、以下のような人に特にオススメだ。
- アニメ版・原作ファンで、10年後の2人の姿を見届けたい人
- 初恋のむずがゆさや懐かしい感情をもう一度味わいたい人
- 小豆島の美しい風景と共に、青春を重ね合わせたい人
- 高橋文哉や永野芽郁の演技を通して、実写化の魅力を堪能したい人
アニメや原作を知らなくても楽しめるが、事前に触れておくことで映画の奥行きが増す作品である。
初恋を思い出させてくれるラブストーリーを味わいたい人には、ぜひおすすめしたい一本だ。
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映画『からかい上手の高木さん(2024年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:今泉力哉
- 出演:永野芽郁、高橋文哉、鈴木仁、平祐奈、前田旺志郎、志田彩良、白鳥玉季、齋藤潤、江口洋介
- 公開年:2024年
- ジャンル:ロマンス、青春、コメディ