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中国アニメーション映画『ヨウゼン(2025年)』感想考察|封神演義が生む共感と『ラストサムライ』との比較

超美麗CGアクションと封神演義の英雄譚が融合した最新中国アニメ映画

―『ヨウゼン』映画レビュー―

中国アニメーション映画『ヨウゼン』は、「単なる中国のアニメーション」ではなく、古典小説である「封神演義」をベースとして現代的に再構築した壮大なファンタジー作品である。フルCGによる迫力のあるアクションと、英雄・楊戩(ヨウゼン)を中心とした人間ドラマが融合し、ビジュアルだけでなくストーリー性でも視聴者を引き込む作品となっている。

中国ではなじみの深い神怪小説「封神演義」を独自の解釈でリメイクし、新しいストーリーとして再構築した映画『ヨウゼン』。華やかで動きのあるアクションシーンや美麗な映像表現に加え、家族の絆や葛藤といった、現代でも普遍的なテーマ性が組み込まれており、文化的背景を知らなくても十分に楽しめる作品として仕上がっている。

主人公のヨウゼン(楊戩)は、中国では日本でいう「桃太郎」並みに有名な知名度を誇る英雄的キャラクター。彼を取り巻く哪吒(ナタ)など人気キャラクターも様々に登場し、それでも本作のストーリーはオリジナルで、初めて触れる人にとっても作品世界に入りやすい構成となっている。

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『ヨウゼン』あらすじ

太古の昔、仙界と人間界はかつて一体だった。しかし、殷と周の戦乱により、仙界の勢力は急速に衰え、楊戩(ヨウゼン)もまた、かつて持っていた神通力を失い、落ちぶれた存在になっていた。今では、「懸賞稼ぎ」として暮らし、かつての威厳も名声もない生活を送っている。
そんなある日、ヨウゼンは偶然、自分の甥にあたる沈香(ジンコウ)と再会する。ジンコウはある伝説の神器「宝蓮灯」を追っていて、その力があれば神通力を倍増させられると言われていた。その目的は、華山の奥に封じられた母親の救出にあった。
ヨウゼンは、自身が封印に関わった過去、そして正義と忠義の狭間に揺れ動く運命と向き合うことになるのだった。

『封神演義』とは?中国文学と映画を理解するための基礎知識

レビュー・感想の前に、中国映画『ヨウゼン』の背景にある原典、中国においては独特な位置づけを持っているそもそもの『封神演義』について、要点を整理しつつ解説しておこう。

中国では誰もが知る物語であり、その位置づけを理解すれば、ストーリーを追う上で、より楽しめる材料となるだろう。

文学的な位置づけ

  • 明代16世紀に成立した神怪小説であり、「三国演義」「西遊記」「水滸伝」「金瓶梅」などと並ぶ「明代白話小説」の一つとされる。「西遊記」や「水滸伝」ならば、日本でも知っている人は多いだろう。
  • 四大奇書(明時代(1368年~1661年)頃に成立した中国の代表的な長編小説4作品の総称)には含まれないが、「神魔小説の代表格」として、中国文学史に確固たる地位を持つ。
  • 周王朝の成立を題材にしつつ、道教的な仙人・妖怪・神々が入り乱れる壮大な物語であり、歴史と神話が混在している点が特徴的。

宗教・思想的な背景

  • 道教や民間信仰の神格を数多く取り込み、「仙人」「妖怪」「神将」などのイメージを一般化した。『ヨウゼン』でも、多数の「仙人」「妖怪」「神将」が登場する。
  • クライマックス「封神榜(:ほうしんぼう)(神々の位を与える儀式)」は、道教の神々体系の”由来譚”として受け止められている。

大衆文化における位置づけ

  • 子ども向けの絵本・京劇・ドラマ・マンガ・アニメなども、多様な形で生産されている。
  • 楊戩(ヨウゼン)、哪吒(ナタ)、妲己(ダッキ)、姜子牙(キョウシガ)といったキャラクターは、日本でいうところの桃太郎や源義経のように国民的英雄として定着している。
  • 近年は『封神三部曲』(実写映画)や『哪吒之魔童降世(訳:ナタ 魔童の大暴れ)』(アニメ映画)の大ヒットによって、再び中華国民的関心を集めている。

現代における意味

  • 『封神演義』は、古代の殷周(いんしゅう)革命をベースにしているため、「正義が暴君を倒し、新しい時代を築いていく物語」として現代中国でも親和性が高い。
  • 国家的プロジェクトな超大作映画が作られるのも、単なる娯楽ではなく、文化的・思想的な「再確認」の意味がある。

まとめ

『封神演義』は中国にとって、

  • 文学史的には神怪小説の代表作
  • 宗教的には道教神話を体系化した源泉
  • 大衆文化的には国民的キャラクターの宝庫
  • 現代的には古典を再解釈する国家的題材

という、多様な位置づけを持っている。

そのため、『ヨウゼン』のようなリメイク作品の背景には、「みんなが知っている物語をどう新しく描くか」という文化的な期待が強く影響するのである。

 

『ヨウゼン』映画レビュー:映像美とアクションで魅せる中国アニメの快挙

ここからは、中国アニメーション映画『ヨウゼン』のレビューに入っていく。 映画としての実績、映像美、そしてストーリーについて触れていこう。

中国でアニメーション映画興行収入100億円突破の快挙

中国でヒットしたフルCGアニメーション映画『ヨウゼン』。その興行収入は、中国の国内で100億円以上だと聞く。が、日本のアニメは日本国内だけで 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が407億円。2位が『千と千尋の神隠し』で317億円。国内のアニメ映画だけで世界的な数字を叩き出している。人口や市場規模を考えると、アニメにおいて中国は日本に遠く及ばない。というか、日本ではトップ映画のほとんどがアニメ。実写映画は、あのタイタニックですら日本では4位に落ち着いている。

ja.m.wikipedia.org

しかしながら、少々特異なアニメ大国クールジャパンと比べて、中国のアニメーションの市場規模はまだまだ発展途上だ。その中で、アニメーションで100億円を突破したという事実、それは快挙だと述べる書き方を、ニュースサイト等ではしている。伝統文学『封神演義』という題材としての強さがあるのだろう。まぁ視聴してみる価値は、ある。

吹き替えと声優キャスト

私は視聴する際、字幕で観るか吹き替えで観るか迷ったのだが、しかしAmazonプライムでは吹替版しかなかった。選択の余地はない。

日本のアテレコでは名だたる実力派声優陣(津田進次郎、沢城みゆき、など)を起用しているが、中には声優が本業でない者もいる。こんなところにまでアイドルや人気配信者を潜り込ませてくるのは、日本の産業気質の悪いところだ。別に、演技が上手いのなら文句の出ようもないのだが、しかし実際は不得手で滑舌も悪く、視聴していて興が削がれた。もっとちゃんとした声優を起用すべきだったように思う。悪い面は最初に言っておこう。

もっとも、それは日本の悪いところであって、作品自体の評価ではないことは承知して欲しい。

『ヨウゼン』はピクサーに近いフルCG表現

本作は完全なフルCGアニメーションであり、厳密に言えば、日本における”アニメ”ではない。海外では、アニメーションとアニメを明確に分けているようで、日本でいうところのアニメを「アニメ」、実写ではない、イラストや絵を用いた、あるいはCGでの表現手法で描いた作品をアニメーションと呼ぶらしい。

とは言え、日本のゲームをモチーフにした映画 『ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン』はフルCGだが、私はアニメとして認識してしまうので、それは不思議だ。日本のアニメは、CGとかイラストを超えた、何かを感じさせるものがあるのだろう。

コレスゲェな……。4Kで見るとさらにスゴイ。2021年なんだけど。映像美だけで言えば『ヨウゼン』超えてるんだけど。スクエニが本気出すとこうなるんだ……。

っと、ヨウゼンのレビューであった。

さて、『ヨウゼン』はフルCGで、日本のアニメに影響を受けたと言うよりは、ピクサーが製作したように感じる作風だ。顔の動きやモーションの作り方も、ハリウッド式CGに影響を受けているように感じられる。

CGは超美麗だが、書き込みの具合はPlayStation 5の最新CGを使ったゲームの方が優れているだろうか。

しかしながら、映像美はかなりのハイクオリティを放っていたと思う。

ストーリーは封神演義が下地に

ストーリーは、可もなく不可もなし。浅くはないが、深くもない。しかしながら、私は日本人で、中国の歴史的文学背景を知らないからそんな感想を述べるに留まる。中国から由来する人々には染み深い内容で、その物語に深く潜り込めるのかも知れない。

前述した通り、本作は『封神演義』をモチーフとした作品であり、歴史文学との親和性が大きく影響し、それがアニメーションとして中国国内でそれなりにヒットした要因と言っていいだろう。

日本人にとってはやや距離感(間)のある題材だが、文化的背景を理解すればより楽しめるだろう。

圧巻のアクション演出

演出、特にアクションは圧倒的と言って申し分ない。まさに特筆すべき見どころのひとつ、『ヨウゼン』の最大の魅力た。

日本の漫画、「BLEACH(ブリーチ)」に登場する朽木白哉の千本桜を思わせる必殺技や、細かく描かられる肉弾戦のシーンの数々は、私に世界トップレベルの興奮を味わせた。

ヌルヌルと動く滑らかさ、超広大な背景とともに描かれる戦闘シーンはディズニー作品にも匹敵し、むしろ凌駕する場面すらある。

中華アニメーションへの、今後の期待を抑えられないポテンシャル、そしてその実力を遺憾無く発揮していたのだった。

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歴史的背景が観客に響くとき――中国アニメ映画『ヨウゼン』とハリウッド映画『ラストサムライ』の比較

ある映画が自国でヒットするかどうかには、単なる映像の派手さやスター俳優の知名度、ストーリーの緻密さ以上に、「歴史的・文化的背景が視聴者をどれほど共感させられるか」が大きく関わってくると私は考える。『ヨウゼン』が中国でヒットした理由を考えた場合、ハリウッド映画『ラストサムライ』の日本での受容が良い比較対象になる。

超名作であるから、未視聴の方は是非!

『ラストサムライ』が日本で受け入れられた理由

『ラストサムライ』は、海外資本によって製作された映画作品でありながら、日本国内では大きな興行収入を上げた。そこには、明治維新という日本人にとって特別な時代背景、そして「武士の終焉」という歴史的記憶への共感があった。海外の視聴者にとってはアジアのエキゾチックな時代劇に過ぎなくても、日本人にとっては自国の歴史を描いた特別な作品であり、そこに深い感情移入が生まれたのである。

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中国で『ヨウゼン』がヒットした背景

同じように『ヨウゼン』も、中国における「封神演義」という国民的物語を下敷きにしてある。

楊戩や哪吒といったキャラクターは、中国の人にとって幼い頃から親しんできた存在であり、家族や神々の物語は単なるファンタジーではなく、「自分たちの文化そのもの」として心に刻む。自分たちの文化の延長線上にある作品として、受け止めたのである。

だからこそ、中国での興行的成功は、物語が映像的に優れているだけでなく、文化的記憶を呼び起こす再解釈として受け止められたからだと私は考える。

日本で『ヨウゼン』はどう受け止められるか

それでは、日本においては『ヨウゼン』はどうだろうか。日本人にとって「封神演義」は必ずしも身近な存在ではなく、楊戩という名前に親しみを覚える人は少ないだろう。そのため、中国でのように「国民的伝承の再解釈」としての共感をえるのは難しい。

しかしながら、だからこそ別の魅力が立ち上がってくるのではないだろうか。日本の視聴者は『ヨウゼン』を「異国の神話を体験するファンタジー」として楽しむことができる。緻密な映像美、アジア風のアクション、そして神々と人間の境界をめぐるドラマティックなストーリーは、日本アニメではあまり語られない感触を与えてくれる。つまり日本では、文化的な共感よりも、異文化の新鮮さこそが鑑賞の動機になるのである。

このような点で、『ラストサムライ』が日本で「自国の歴史を再確認する映画」として支持されたのに対して、『ヨウゼン』では日本で「異国の神話を知る窓口」としての価値を持つ。

両者は方向性こそ違うものの、いずれにしても視聴者に文化的な意味合いを考えさせる作品であることには変わりない。

まとめと個人的な視点

私自身の個人的見解としては、日本での『ヨウゼン』公開・配信を、単に中国のアニメーションを紹介する一本としてではなく、「異文化の物語を自分なりにどう受け止められるか」そういう体験として楽しみにしている。

中国の人々が感じた郷愁や誇りとは違うかもしれないが、異国の神話を通じて、自分の感性がどう揺さぶられるのか。それを記録しておくこと自体が、この映画を視聴する意味になってくると私は考えている。

 

こんな人にオススメ!

『ヨウゼン』は、単純な中国アニメーションではなく、壮大な神話を背景にしたファンタジー・アクション大作である。 中国文化や封神演義に興味がある人はもちろん、迫力のあるフルCG映像を堪能したい人、 そして『ラストサムライ』のように歴史や文化的背景が物語に深みを与える映画が好きな人には特にオススメできる。

異国の神話を新鮮な視点で味わいたい方には、きっと心に残る一本になるだろう。

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まとめ

『ヨウゼン』の中国国内でのヒットには、「封神演義」という国民的物語を背景にした文化的共感が大きく寄与している。 一方、日本での受容は「異国の神話を体験するファンタジー」としての側面が強く、文化的共感よりも新鮮さや映像美が評価されるだろう。

『ラストサムライ』が日本人にとって歴史的背景への共感を呼んだように、『ヨウゼン』は私たちに「異文化をどう受け止めるか」という問いを投げかける作品である。

自国と他国で異なる映画の受け止め方を比較することは、映画体験そのものをより豊かにしてくれるのではないだろうかと私は考える。

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映画『ヨウゼン(2025年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:安川有果
  • 出演(日本版):佐野晶哉、増田俊樹、沢城みゆき、津田健次郎、夏絵ココ
  • 公開年:2025年
  • 上映時間:131分
  • ジャンル:アニメ、アクション、ファンタジー

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