―渦巻く陰謀。守るために、撃つ―
綾瀬はるか主演。ハードボイルド・ガンアクション映画
―『リボルバー・リリー』―
2023年公開の映画『リボルバー・リリー』は、作家・長浦京の同名小説を原作とした本格ハードボイルド・アクション大作。主演は人気女優綾瀬はるか。本作で彼女は第47回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞し、その演技力と存在感が改めて高く評価された。
『リボルバー・リリー』簡単解説
関東大震災から1年が過ぎようとする東京で、軍の目論見から狙われる、とある少年を守ろうとする元諜報員・小曾根百合(綾瀬はるか)。リボルバー・リリーの異名を持つかつてのスゴ腕スパイは、少年と日本の未来に懸けて再び銃を手に取り立ち上がる。
スタイリッシュなガンアクション、緊迫感のあるストーリー、そして綾瀬はるかの新境地ともいえるクールな演技。
映画『リボルバー・リリー』は、単なるアクション映画にとどまらず、大正時代を背景にした歴史性と人間ドラマを併せ持つ作品となっている。
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『リボルバー・リリー』あらすじ
『リボルバー・リリー』レビューと見どころ
銃を手にして戦う女性を描く本作『リボルバー・リリー』。
主演の綾瀬はるかをこれまで見たことのない、キリリとしたハードボイルドな”強い女性”、に描いた姿が魅力だ。激しいガンアクションと併せて、“心身ともに強い女性像”を体現している。兎に角クールで圧倒的にかっこいい、イケてる綾瀬はるかを見ることができる。
上映時間は139分とやや長尺。しかしながら単調ではないストーリー展開と、息もつかせぬ銃撃シーンは飽きることを許さないだろう。
しかしながら、長編小説を原作にした本作は、原作勢にとっては物足りない仕上がりのようで、Amazonプライムでのレビューは賛否分かれている。たしかに長編小説を映画の中に収めたことで、背景が不明瞭な部分や説明不足のキャラクターが居てしまっているのも事実と私も感じた。また悪い意味で、緊張感が続いて疲れるという意見もあったりした。
そうは言っても、大正時代を思わせるモダンな美術や舞台装置は、日本映画としては特筆すべきクオリティで頑張っていて楽しめるし、限られた尺の中でこれほど多彩なアクションシーンを多数収録している点は称賛に値すると思う。映像的な魅力を存分に発揮している点は、私は高く評価する。
どんな映画でも評価は常に賛否両論あるものだが、私としては『リボルバー・リリー』はかなり楽しめた部類に入る。綾瀬はるかの、新たな代表作と呼んでもよいほどの完成度だ。
『リボルバー・リリー』と大正時代 ― 強い女性像とファンタジックの説得力
大正時代末期を舞台に描いた『リボルバー・リリー』。
本作で描かれるのは、銃を手に再び戦いへと身を投じる元スパイの女性小曾根百合(綾瀬はるか)。なぜこの物語に、「大正時代」という背景が設定されているのか。そして、ガンアクション映画の主役が女性であることの必然性は、どこにあるのか。ここでは、その考察をしてみよう
大正時代と女性の社会進出
20世紀初頭、日本は第一次世界大戦・第二次世界大戦へと向かう激動の時代、いわゆる大戦乱時代だった。大正時代(1912年~1926年)といえば、「大正デモクラシー」と呼ばれる社会の自由化や、女性の地位向上の動きが広がった時期。令和ではない米騒動もこの大正時代、米の価格高騰に対して富山県の主婦たちが中心となって運動を起こし、全国な民衆騒動となった。女性が歴史の表舞台に立ったことも象徴的である。
この時代に活躍した女性は数多い。
例えば、「大正デモクラシー」の代表格ともいえる平塚らいてう(ライチョウ)。日本初の女性文芸誌『青鞜』を創刊した思想家・作家で、「元始、女性は太陽であった」の言葉で知られる。女性解放運動を推進し、後の婦人運動の先駆けとなった人物だ。
与謝野晶子も有名どころ。歌人・作家として近代短歌を革新し、『みだれ髪』などの情熱的な作品で知られる。教育や婦人運動にも関わり、大正期の文化的象徴的存在となった。「君死にたまふことなかれ」を知らない人はいないだろう。
私の好きな詩、「私と小鳥と鈴と」も大正だ。詩人金子みすゞも大正期を代表する女性のひとり。
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
― 金子みすゞ『私と小鳥と鈴と』
この詩が発表されてから100年以上が経っているのに、いまさら多様性多様性いってるんだから、人間とはわからんもんである。
ちょっと脱線してしまった気もするが、つまり現在の女性解放運動や女性権利運動、そしてちゃんとしたフェミニズムは大正時代がルーツであると言っていい。
こうした大正期の歴史的背景を踏まえれば、『リボルバー・リリー』が「強い女性」、つまり「リリー」を描くことには意義がある。単なるガンアクションではなく、大正時代を背負うことで、よりリリーが存在する根拠が増し、ディティール深いものにするのだ。
大正モダンの雰囲気が生む説得力
もう一つのポイントを見てみよう。結論から言うと、大正時代のレトロな雰囲気が、ファンタジック性に合うのだ。大正時代というモダンでありながら古き良き時代を背景にすることで、物語はファンタジックな説得力を得る。
例えば、現代で銃をガンガンぶっ放してみよう。仁義が漂うゲーム「龍が如く」のような任侠アクションになってしまう。まぁそれはそれで面白いんだけど、戦争のために教育を受けた諜報員が活躍する、という話は現代では成立しにくい。なんか、っぽくないのだ。わかる?まぁそれはそれで面白いんだけど。
現代で銃をぶっ放す、任侠アクションじゃない映画レビューはコチラ ▼
セピア調の雰囲気漂う(実際に映像に加工処理はされてないがそんなイメージで)モダンな世界で、リボルバーを持った女性がぶっ放すというのが、ファンタジックで受け入れられる。
もっと分かり易く例えると、映画『ファンタスティックビースト』を現代世界で繰り広げてみるとどうだろう?想像してみてほしい。なんか嘘っぽく映らないか?逆に石器時代で展開してみよう。やっぱりおかしく感じるだろう。1900年代前半の、ほどよく文明が発達して、しかし現代のような最新テクノロジーのない、良い加減の時代背景がファンタジックさを生むのだ。
そこにリボルバーを持った女性スパイを置くことで、非現実的すぎず、しかし現代劇にはないノスタルジックな魅力が生まれる。
『リボルバー・リリー』はファンタジー映画ではないが、しかしガチガチに固めた現実なストーリーでもない。ちょっとノスタルジックで架空の世界ですよというのに説得力を持たせるため、大正時代というモダンでレトロな背景がリアルと虚構の間をうまく橋渡しすることで、独特の世界観を成立させられているのだ。
キャスト考察 ― 綾瀬はるか
さあ、キャラクターに焦点を当ててみよう。といっても、ほかでもない主演を務める綾瀬はるかなのだが。
視聴すれば、まあスゴイ!あの綾瀬はるかが!?という驚きを私は伴った。普段は明るく可愛らしい役柄のイメージが強い彼女だが(少なくとも私の中では)、本作では一転してクールで迫力ある元スパイを熱演。映画『極道の女』にも出てきそうな迫力だった。さしずめ和製アンジェリーナ・ジョリーと言ったところ。
アクションもさることながら、触れば棘がささりそうな視線、声のトーン、雰囲気、どれをとってもハマっている。銃を手にした姿は圧倒的な存在感を放っていた。これほどリボルバーが似合う日本の女性が、ほかにいるだろうか?いや、いない。
これまでにバレーボールがアレの映画とか『ひみつのアッコちゃん』、ラブコメ映画などで見せてきた笑顔は完全に封印され、本作では笑みなぞ1ミリも見せない綾瀬はるか。
代わりに妖艶な魅力と、大人のキリッとした視線を貫いていた。
また、私の好きな俳優に古川琴音も出演しているのだが、失礼ながら「めっちゃ可愛いじゃん」と思ってしまった。あれ?このカワイイ女性どっかでみたことある。どこだったっけ?とか思って観ていた時の、「古川琴音じゃん!」と思い出した瞬間の衝撃たるや。私の中での彼女は映画『今夜、世界からこの恋が消えても』なのだが、『リボルバー・リリー』では可憐な乙女に大変身していた。レビューはコチラ ▼
「男子三日会わざれば刮目してみよ」という言葉があるが、しかし女性というのも、変われば変わるものである。
『リボルバー・リリー』はストーリーやアクションだけでなく、綾瀬はるかをはじめとする豪華キャスト陣の演技が大きな見どころとなっている。役者の新しい一面を引き出す作品としても、高く評価できるだろう。
こんな人にオススメ!
- 綾瀬はるかの新境地を見たい人
- 女性が主人公のガンアクション映画が好きな人
- 時代を舞台にした映画作品に興味がある人
- 緊張感あるアクションと人間ドラマを両方楽しみたい人
- 映画を通して歴史や女性の生き方を考えたい人
まとめ
『リボルバー・リリー』は、単なるガンアクションではなく、大正時代という背景に根差した「強い女性像」を描き出す作品である。
綾瀬はるかが放つ圧倒的な存在感、そして時代を背負うリリーの姿は、観る者に強烈な印象を残すだろう。評価は分かれるかもしれないが、アクション映画としての迫力と歴史的文脈を合わせ持つ点で、邦画の中でも異彩を放つ一作である。ぜひ視聴して、その熱量を体感してほしい。
映画『リボルバー・リリー(2023年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:行定勲
- 出演:綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、ジェシー、佐藤二朗、吹越満、内田朝陽、板尾創路、橋爪功、石橋蓮司、阿部サダヲ、野村萬斎、豊川悦司
- 公開年:2023年
- ジャンル:ドラマ、アクション