映画『レディ加賀』|タップダンス×温泉街!和と洋の融合エンタメ
― 小芝風花主演・加賀温泉を舞台にしたコメディ・ドラマ ―
石川県・加賀温泉郷を舞台にした映画『レディ加賀』は、伝統ある温泉街の若女将たちが町おこしに挑むため、タップダンスチームを結成!するストーリー。
温泉郷のPRに、和文化と洋のリズムを融合させた圧巻のパフォーマンスを披露する!
『レディ加賀』簡単あらすじ解説
主人公の樋口由香(小芝風花)は、東京でタップダンサーとして活躍する夢を追いかけていた。
ある日、実家の老舗旅館「ひぐち」から、母親の急病の知らせを受け由香は帰郷するが、帰ると当の母親はぴんぴんしていた。
実際のところ、タップダンサーとしても芽吹かない由香。これを機にその夢をあきらめようと女将として修行するべく「女将ゼミナール」に通い始めるが、現実はそう甘くなく、鬼講師からは叱られてばかり。
そんな折、加賀温泉を盛り上げるためのイベント企画が立ち上がり、由香がその矢面に立たされる。慣れない旅館業に四苦八苦しながらも、地元を盛り上げるイベント企画に携わる由香。仲間との衝突やトラブルもありながらも、若女将たちと力を合わせてタップダンス公演を成功させようと奮闘する。
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映画『レディ加賀』レビュー|小芝風花の着物タップが光る!
映画ポスターのビジュアルから、皆でカーリングでもする映画なのかと思ったら違った。
実際は、本作はタップダンスと加賀温泉の女将文化を融合させた作品である。軽快なタップダンスと着物の華やかな姿が、映画『レディ加賀』の見どころ。
主演の小芝風花は相当な稽古を積んだようで、ダンス自体は感動もの!とまではいかないものの、演出や映像美は申し分なくなかなかだったと私は感じた。
もっとスーパーなダンスや感動を見たかったら、インド映画を見るべし!
シナリオはまぁありがちな、夢を追いながらも地元に戻り奮闘するという王道路線。人間ドラマやコメディ要素も垣間見えるが、やや安易な展開も見受けられ、ワクワクや感動は少しばかり薄いと感じられた。
また、唐突に始まるエンドロールによって、ストーリーの投げっぱなし感が私の中に生まれたのは否めない。
そのあたりは、主演の小芝風花でカバーということでなんとか。
それから作中には、加賀温泉の名産品や名所、そして温泉も登場しない為、PRになるかどうかは怪しい。「加賀だからこそ!」という強いアピールポイントは欲しかったところだ。
いろいろと賛否は分かれそうだが、そうはいっても見られる映画にはなっていると私は感じた。
タップダンスで食べていける?
資料として調べたので、補足で紹介する。
小芝風花や女将たちが披露するタップダンス。物語で樋口由香はタップダンサーを目指しているし、映画の序盤ではタップダンスを披露するプロのダンサーが登場するのだが、実際にタップダンスだけでおまんまは食いつなげられるのだろうか?
答えは「NO」。映画や舞台で観ると華やかだが、現実はなかなかに厳しいようだ。
まず、市場規模が小さい。バレエやヒップホップ、ジャズダンスと比べると習おうとする人も観客も少なく、需要が限られている。そのため多くの場合は演劇やミュージカル、イベントの一部として出演する人がほとんど。ステージの出演料だけで生活するのは、かなりハードルが高い。
大抵は「タップダンスを軸にした複数の活動」、つまりは指導者として、または振付師として、昨今では動画発信者として、それらを組み合わせてタップ中心の生き方をしていくことになる。
映画『レディ加賀』と「LADY KAGA」の関係性
本作で最も注目すべきポイントは、やはり着物姿でタップダンスを踊る女将たちである。
着物×タップダンスという斬新な発想は、加賀温泉郷に本当に実在するPRチーム「LADY KAGA」から着想を得たらしい。映画タイトルが『レディ加賀』って「レディ・ガガ」じゃんって思ってたら、さらにその前がいた。狙って名前を付けたのか、たまたまそうなったのかは知らん。
監督の雑賀俊朗は、駅前に並んだ女将たちの着物姿が「まるで踊っているように見えた」と語っていたそうだ。そこから、女将とダンスを結びつけるアイデアが生まれたようである。
参考:Lady Kaga | Official Site(公式サイト:http://ladykaga.me/)※httpsではないのでリンクは控えました。
「タップダンス」と「加賀文化」の意外な共通点
ここで、タップダンスを加賀で用いる意義を考えてみよう。
映画『レディ加賀』で披露される着物姿のタップダンス。その背景を掘り下げると、タップダンスの歴史と加賀文化の歴史には、異なる文化の中で生まれたものでありながら、「制約や抑圧から新しい表現を生み出した」という点で驚くべき不思議な共通点を持つことが見えてくる。
タップダンスは19世紀のアメリカで、実は奴隷制度の中から誕生した。奴隷として連れて来られたアフリカ系の人々は、楽器を取り上げられ、喋ることも禁じられていた。
その制約の中で、彼らは足を打ち鳴らして会話をし、そしてリズムを刻み、自分たちの音楽を守り抜いたのだ。
やがてヨーロッパ系移民のステップダンスと融合し、舞台芸術として花開き発展していった。
つまり、抑え込まれた状況が、むしろ新しい表現を生むキッカケになったのである。(※奴隷制度を肯定する意図はなく、歴史的事実の説明です。)
一方、日本の加賀藩もまた、江戸幕府の厳しい監視下に置かれていた。
”加賀百万石”と名高いが、その実、加賀藩は外様大名として武力を誇示することを制限されていた。ようするに、加賀藩に反乱を起こされたらタマランということで、幕府は警戒していたのだ。
そのため加賀は、武力ではなく文化の発展に力を注いだ。美しい加賀友禅(着物の染色技法)や高級品の九谷焼、能楽や茶の湯など、今日まで受け継がれて来た伝統芸術は、そのような状況から生まれたのである。本作『レディ加賀』のクライマックスで、舞台が華やかなのはそういう歴史があるからだろう。
こうした「加賀百万石」の豊かな文化は、まさに抑圧の中から生まれた創造の結晶だ。
つまり、タップダンスと加賀文化は、ともに「抑圧の中で自由を求め、表現を工夫することで新しい価値を生み出した」という点で繋がっている。
足音のリズムや鮮やかな染め模様には、単なる芸術を超えた、人々が生きる力とその誇りが刻まれているのである。
作中でも様々にトラブルが発生し制約を課せられるが、それでも女将たちの、いま出来ること、いま在るものでイベントを成功させようとする様が描かれていて、タップダンスと加賀文化の歴史に通ずるものを私は感じた。
映画『レディ加賀』で女将たちが加賀で踊るタップダンスは、この二つの歴史を象徴するようである。
こんな人にオススメ!
- 小芝風花の新しい一面を見たい人
- タップダンスや舞台芸術に興味がある人
- 地域活性や町おこし映画が好きな人
- 仲間と挑戦する物語に胸が熱くなる人
まとめ|映画『レディ加賀』の魅力
映画『レディ加賀』は、王道路線のストーリーながら、和の伝統と洋のタップダンスを融合させた唯一無二の作品である。
脚本や演出に目新しさは少ないが、挑戦的な題材と華やかな着物姿で舞う女将たちの姿は、単なるエンタメを超えて「文化が出会う瞬間」の、他にはない映画体験を味わえるだろう。
大傑作とまでは言わないが、一度観てみる価値はある作品である。
映画『レディ加賀(2024年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:雑賀俊朗
- 出演:小芝風花、松田るか、青木瞭、中村静香、八木アリサ、奈月セナ、小野木里奈、水島麻理奈、佐藤藍子、篠井英介、森崎ウィン、檀れい
- 公開年:2024年
- ジャンル:ドラマ、コメディ