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『M3GAN/ミーガン(2023年)』感想レビュー|スタイリッシュで残酷なAIスリラー。美しく狂った近未来SF

残酷なのにスタイリッシュ!近未来SFサスペンスの傑作!

映画『ミーガン』感想レビュー

生活の隅々までテクノロジーが入り込む現代。もしも子どもの心を癒し、完璧に守ってくれる“友達”が人工知能によって作られるとしたら――。映画『M3GAN/ミーガン』(2023年)は、そんな理想的なドラえもんが恐怖へと転じる瞬間を描いたSFスリラーである。AI人形ミーガンの「守る」という純粋な使命が、次第に人間社会の倫理を踏み越えていく。その過程は、美しくもぞっとするような現代の寓話として、視聴者の背筋を冷たく撫でていくのだ。

本作『ミーガン』は、ブラムハウス・プロダクションズ製作の近未来ホラー×サスペンス映画であり、公開当時からSNSを中心に話題を呼んだらしい。AIが人間の倫理を超えるというテーマを、スタイリッシュな映像と皮肉を交えて描き切っている。

「ミーガン(2023年)」をイメージしたAI人形ロボット

AI人形ロボット

興奮冷めやらぬ!兎にも角にもこのレビューを書き上げて、すぐさま続編である『ミーガン 2.0』を観たい!そう思わせるほど、残酷でありながら洗練された映像美を誇るSFスリラーである。

視聴のきっかけは、インプレゾンビ蠢く魔境Xにおいて『ミーガン 2.0』の配信が話題になっていたからだ。んだらば私も例にもれず、その話題に乗っかっていこうそうしよう。「2.0」というタイトルの通り、続編であるらしいが、前作を観ていなくても楽しめるという情報も見かけた。とはいえ一応AIに確認してみたところ、「『ミーガン 2.0』を観る前に一作目『M3GAN/ミーガン』(2022)を観ておくことを強く勧める」との回答。だらばんだらば観ましょう観ましょうそうしましょうということで、素直に一作目から視聴することにしたのだ。

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『ミーガン』あらすじ

玩具メーカーで働くジェマは、事故で両親を失った姪ケイディを引き取る。子育てに不慣れな彼女は、自ら開発したAI人形「M3GAN(ミーガン)」をケイディの友達として与える。学習能力を持つミーガンは、ケイディを守ることを最優先に行動し始め、やがてその「守る」という命令が暴走。人間の手に負えない存在へと変貌していく。
人工知能と人間の関係、そして「愛」と「制御」の境界を問うSFスリラーである。

スタイリッシュな映像美とテンポ感

このスタイリッシュさがたまらない。ロボットやAIが人間対して反乱を起こすという映画は数あれど、これほど洗練された映像、構成、演出で描き切った作品は類をみないのではないか。徐々に人間の道徳感から外れていくAI人形ミーガン。スリラー演出はショッキングだが、その彼女のハイセンスな立ち回りが大変に見応えがある。まるでダンスのような動きと、冷たい視線。

その狂気さすら、美しい。

本作『M3GAN/ミーガン』の映画全体に流れるトーンは、冷たいガラスのような質感に満ちている。光沢のある研究室や無機質なインテリアなど、未来的な美術デザインが徹底されており、AIホラー映画としての世界観を強固なものにしていた。映像のテンポも無駄がなく、そのテンションを保ったままストーリーが進行していくため、視聴者を最後まで、えも言われぬ昂揚感で包み込む。

ワクワクが止められない止まらない。

.このワクワクの止められなさは、ジャンルは違うが映画『8番出口』に通じるものがある ▼
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中盤以降はスリラーらしい緊迫感と、どこかコミカルでブラックなユーモアが交錯し、まさに“現代的ホラー”の理想形といえる。暴走するAI人形の恐怖を描きながらも、映像演出そのものがファッション広告のようにスタイリッシュで、すべてのショットが意図的に美しく構成されている。

その映像美は、まさにセンスの塊だ。

101分という上映時間の中で、緊張と余韻を見事に両立させており、視聴後には完成された超大作映画を観たかのような満足感が残る。音楽・照明・カメラワークなど、どの要素も計算され尽くしており、AIスリラーとしての完成度は非常に高い。

こうして、人工知能がもたらす狂気と美学が融合した『ミーガン』は、“美しく狂った近未来寓話”として成立している。その完成度の高さから、続編である『ミーガン 2.0』への期待はさらに募るばかりだ。

 

映画『M3GAN/ミーガン』が生み出す“不気味の谷”のリアリティ

映像の最先端を走る映画『ミーガン』。視聴していて、ただただその映像技術の高さに驚かされる。

彼女の表情はCGだろうか、シリコンの肌にわずかな温度を感じさせながらも、どこか無機質。それでいてロボットらしい、滑らかな動きをする。ロボットらしい滑らかな動きっていう表現が自分でもよくわからないが、まるで人間に近づけた現実に存在するロボットが喋っているかのような、絶妙な質感と動作。目の動きやまばたきの間合いが絶妙で、人間のようでありながら、確実に“人間ではない”という違和感を漂わせている。そのギリギリの境界線が恐ろしく魅力的だ。

まさに“不気味の谷”一歩手前の絶妙なライン。

.不気味の谷現象:人間に似せたロボットやCGキャラクターが、ある一定のリアルさを超えると、かえって“気味の悪さ”や“違和感”を覚える心理的現象のこと。人間らしさが高まるほど好感度が上がるが、完全に人間に近づく直前で急激に不快感が増すというグラフ状の反応を示すことから「谷」と呼ばれる。
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不気味の谷現象のグラフ

不気味の谷現象

参考:不気味の谷現象 - Wikipedia

ミーガンが二足歩行でスタスタと歩く映像は、どうやって撮っているのかわからない。人間らしくもありながら人形のような挙動は、作られたロボットであることを表現していた。実際に人が面を付けて演技しているのだろうか。全体の姿はCGには見えない。

ミーガンの造形は、人間に酷似していながらも、人形的で、“生きているようで生きていない”という矛盾を孕んでいる。このような感覚こそが、人に本能的な恐怖を与えるのではないか。

これはまさに、AIホラーの核心を突く演出である。

本作『M3GAN/ミーガン』は、最新技術と映像表現が生み出した“人工的な生命”の不気味さを最大限に活かしている。AI映画としてのテーマ性だけでなく、ビジュアル面でも次世代のホラー表現を切り開いた作品だろう。

この完成度の高さがあってこそ、続編である『ミーガン 2.0』がどのような進化を遂げるのか、やはり期待せずにはいられない。

 

映画『M3GAN/ミーガン』が問いかけるAIと人間の共存の未来

ChatGPTをはじめ、急速に発展を続ける人工知能産業において、本作『ミーガン』はもはやSFの範疇に収まらない作品である。映画内の出来事というより、すでに私たちの現実と地続きの問題を描いていると言える。

お金さえかければ、実際にミーガンは作れそうだし。

作中に登場するAI人形の彼女は、子どもの感情を理解し、学習し、行動を最適化していく存在だ。極端な暴走を描きながらも、そのテクノロジーの大本は、現代のAI技術の延長線上にある。そう、やはり資金さえあれば、現実世界でも同様のAIロボットが実現し得るというリアリティが、この作品をより恐ろしく、そして興味深いものにしているのだ。

さあ、もっと視点を広く持ってみよう。

本作は一見、「子どもの世話をロボットに任せてよいのか」という倫理的テーマが提示されているようでもあるが、『M3GAN/ミーガン』が問うているのは、もっと根源的な問題である。つまり、私たちは今後どのようにAIやロボットたちと共に生きていくのか、という問いである。

なにしろ、前述したように、すでに高性能なAIは現実に存在している。

実際に、AIを学習や創作、日常会話に用いる子どもは増えていて、AIを使うことの是非を議論する段階は、もはや過ぎ去ったと私は考える。いまさら避けられない共存の時代の中で、どうやって彼らとの距離を保ち、制御し、共に成長していくのか――そこに本作の核心的なテーマがあるのだ。

『M3GAN/ミーガン』は、テクノロジーに支配される未来を警告しているだけでなく、それは“人間とAIの共存”という現実的な問いの突きつけだ。だからこそ、本作は単なるスリラー映画としての枠を超え、現代社会に生きる私たちに向けた予言的なメッセージを放っているのである。

.AIとの共存を描いた映画レビューはコチラ.

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唯一の違和感――リアリティと物理法則のズレ

最後に、あえてダメ出しをしておきたい。『ミーガン』という作品は、AIのリアリティと社会的テーマを高い完成度で描いた名作である。しかし、そんなリアリティ重視の世界観だからこそ、どうしても引っかかってしまう“イリアリティ(非現実)”な部分があるのだ。妙に気になってしまって、どうしても最後に話しておきたかった。

それは――ミーガンの体重と力のバランスである。

作中で彼女は、大人の男の首根っこを摑まえて引き上げたり、自分の生みの親であるジェマに馬乗りになって首を絞めたりと、まるでアンドロイド兵士のような怪力を発揮する。しかし、どうにも物理現象がおかしいのだ。仮に強化された肉体を与えられ、ロボットならではの怪力を発揮できたとしても、やはりおかしい。

ミーガンに極端な力があっても、しかし彼女の体重は軽いのだ。作中では9歳の男の子が持ち上げて運べるほどの軽さ。精々20kgもないだろう。体重20kgではいくら力があっても地面に立ったまま大人の男をロープに吊るして引き上げられないし(体重の軽い方が持ち上がる)、馬乗りになられても簡単に振りほどけるだろう。まるで“ホラー演出のための力技”のように見えてしまい、そこだけはどうにも納得がいかなかった。

「なんでやねん!」そうツッコミを入れてしまったくらいだ。

もちろん、映画的演出としては必要な“見せ場”であり、ミーガンの不気味さを強調するための誇張であることは理解できる。それでも、この作品があまりにリアルなAI像を描いているだけに、ほんのわずかな物理的違和感が強調されてしまう。まさに、リアルすぎる映画がゆえの矛盾だ。

とはいえ、この“なんでやねん”と言いたくなる瞬間も含めて、『M3GAN/ミーガン』の魅力の一部だと言える。完璧ではないからこそ、人間らしさを持つAIとしての“歪み”が際立つのだ。

 

こんな人にオススメ!

『M3GAN/ミーガン』は、単なるホラー映画ではなく、AIやロボットが現実社会に及ぼす影響や、倫理的問題を考えさせる作品である。以下のような人にオススメだ。

  • 最新技術とホラー演出が融合した映像美を楽しみたい人
  • AIやロボットと人間の関係性、倫理的テーマに興味がある人
  • スタイリッシュでテンポの良いスリラー映画を探している人
  • 続編『ミーガン 2.0』を観る前に前作の世界観を把握したい人
  • ブラックユーモアや現代的ホラーの要素が好きな人

どの視点から見ても、『ミーガン』は観る価値の高い映画である。AIの暴走と人間社会の倫理、そして映像演出の美しさが絶妙に絡み合う作品であり、視聴後には続編への期待も高まる作品だ。

 


締めくくり:『M3GAN/ミーガン』の魅力とは

映画『M3GAN/ミーガン』は、恐怖と美しさ、倫理的テーマとエンターテインメント性を兼ね備えた近未来SFスリラーである。AI人形ミーガンの存在が、視聴者に不気味さと同時に驚きとワクワクを提供し、映像美や演出の巧みさが最後まで飽きさせない。

AI映画としての完成度は言わずもがな、倫理や技術の議論を背景にしたストーリーは、現代的寓話となっている。これから『ミーガン 2.0』を観る予定の人も、まずは一作目『M3GAN/ミーガン』を押さえておくことで、物語の深みやキャラクターの魅力を最大限に楽しむことができるだろう(ってChatGPTが言ってた)。

.続編『M3GAN/ミーガン 2.0』レビューはコチラ.

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結論として、『ミーガン』はホラー好き、SF好き、AIやロボットに興味があるすべての人にオススメできる作品である。リアルな恐怖と映像美、そして倫理的問いかけが融合した本作は、視聴した後に強烈な印象を残すのだ。

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映画『ミーガン(2023年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:ジェラード・ジョンストーン
  • 出演:ロニー・チェン, ジェナ・デイヴィス, アリソン・ウィリアムズ, ヴァイオレット・マッグロウ, エイミー・ドナルド
  • 公開年:2023年
  • 上映時間:101分
  • ジャンル:SF, サスペンス

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