テーマは壮大、でも映像はチープ──スケール感に欠けるディザスター映画『新・大地震』レビュー評価
超巨大地震を阻止せよ!異色のディザスター系映画
『新・大地震』
舞台はアメリカ・カリフォルニア。わずか10人足らずの民間地震対策チームが、観測史上最大クラスのメガ地震に挑むのだ!
▶ 読みたいところだけチェック
大規模災害映画というジャンルでありながら、パニック表現や破壊描写はこじんまりとしていた。まるで、地震対策の啓発ビデオを観ているかのような異色作に仕上がっている。
続発する地震と地盤沈下。それはカリフォルニアを襲う、巨大災害の前触れにすぎなかった。地震学者のモリーたちは最新の観測システムにより、「巨大地震が2日以内に発生する」と予測。だが政府はその警告を無視。発生した地震により、ロサンゼルスは大パニックとなる。調査を続けたモリーは、さらに恐るべき危機を知る。このままでは巨大断層が崩壊し、マグニチュード20.0の《メガ地震》が発生、カリフォルニアは太平洋に沈んでしまうのだ。
描くテーマは超巨大、なのに映像は超小規模──チープな地震パニック映画
ストーリーは、突如発生した地滑りから始まる。
その異変を皮切りに、カリフォルニア各地で大規模地震が次々と発生。地盤沈下、地割れ、ビルの倒壊、油田爆発、そして津波と、まさに災害のバーゲンセール。それでもその映像スケールは驚くほど小さく、災害の迫力がまるで伝わってこなかった。
本作で語られる地震の規模は、なんとマグニチュード20.0──3.11東日本大震災の比ではない超異常スケールは、荒唐無稽この上ないし、しかも20.0の根拠も語られない。「とりあえずインパクト狙いで20.0にしてみました!」みたいなノリである。
マグニチュード20.0は物理的に起こり得るのか?
答えはNO。マグニチュード20.0の地震が実際に起これば、地球の地殻が吹き飛んで、惑星規模の破壊が起きるとされる(※AI調べ)。太陽が1秒で放つエネルギーと同等、もしくはそれ以上という説すらあるだ。
実際に起こり得る最大地震規模はM10.5程度とされており、本作の設定は完全に非現実。とはいえフィクションである以上、そこは目をつぶるべき…かもしれない。目をつぶろう!目をつぶるのだ!
ちなみに劇中では「20.0!」と連呼されるものの、「マグニチュード」と明言していなかったから、もしかしたら別の単位かもしれないし、そこはもう深く考えてはいけないのだ。「なんかスゲェんだな」くらいに構えて見ている方が、余計な雑念を捨てられるので良い。
地震パニックなのにアメリカ政府が沈黙
前兆だけでも日本の大震災レベルの被害が出ているにもかかわらず、アメリカ連邦政府はまるで動かず、大統領はおろか州知事すら登場しない。焦点が当たるのはもっとローカルな自治体や学者たち。巨大地震が迫っているはずなのに、危機感のない会話劇が延々と続く。危機を語ってはいたが。
映像の舞台もほぼ室内や橋の上といった限定的な空間ばかりで、ディザスター映画らしい迫力や破壊描写が極端に乏しい。低予算で頑張っていたのかもしれませんが、せっかくのスケール感が伝わらず、ただの内輪劇に見えてしまうのが残念なポイントだった。
『新・大地震』ツッコミどころ満載のフィクション地震映画
本作『新・大地震』では、現実ではあり得ないことが当然のように起こる。それがフィクションの醍醐味ではあるのだが、しかしそれはあり得るかあり得ないかくらいの際々のラインが作品としての価値を高めるのであって、本作はその一線を軽やかに飛び越えてゆく。
例えば、10階建て以上の高層ビルが津波に乗ってサーフィンのように流されたり、そのビルがつり橋に激突したり。地震学者たちは研究どころか自ら災害現場へ救助に出動し、しかも追加で助けに来るのは軍ではなく、民間のヘリコプター。
クライマックスでは、地震を止めるために地中130メートルの穴に爆弾を投下。まるでSFか特撮かという展開に、「なんでやねん」とツッコミを入れずにはいられなかった。
全体的に、昭和の特撮映画のようなノリが漂う一作。べつに特撮を笑っているわけではない。こちらはガチなディザスターを期待していたのに、展開が子供向けレベルだとさすがにゲンナリする。地中130メートルで爆弾を爆発させたところで、地震を止められるわけないだろ。もっとリアリティのある対処法を提示してほしかった。まぁ20.0の時点でリアリティなんてないんだけど…。
真面目に観ると肩透かしを食うかもしれないが、ツッコミを入れながら観ると、それなりに楽しめる可能性はある。
映像の粗さが際立つ|2023年とは思えない低クオリティCG
海外製ディザスター映画でありながら、肝心の映像クオリティは驚くほど低水準。CGによる地盤沈下のシーンは、まるでレゴブロックが崩れていくような安っぽさ。津波の映像も不自然で、1990年代前半のレベルと言っても過言ではない。
ヘリコプターの飛行シーンの動きも不自然で、ビルが津波に乗って橋に激突したかと思えば、次の瞬間には橋もビルもまるごと画面から消滅。あまりの雑な編集に唖然とする。
VFX(視覚効果)に関しては、日本の低予算作品の方が遥かに丁寧な仕事をしている印象だ。
本作を最後まで飛ばさずに観られたことが、唯一の救いだったのかもしれない。
敢えてオススメするなら──
- トンデモ系ディザスター映画や、荒唐無稽な展開を笑いながら楽しめる人
- 低予算B級映画の“ツッコミどころ”を探すのが趣味な人
- 昔の特撮映画の雰囲気やチープなCGに懐かしさを覚える人
- ネットで感想を語ったり、ネタとして消費したい人
「リアルさ」や「緊迫感」を求める方にはまったく向かないが、ツッコミながら楽しむ“珍作枠”としてなら、観る価値はあるかもしれない。
映画『新・大地震』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)
- 監督:ジャレッド・コーン
- 出演:ウィリアム・ボールドウィン、マッケンジー・ウエストモア、グラント・バウラー、トリー・グリフィス
- 公開年:2023年
- ジャンル:ディザスター
- 配信:Amazonで『新・大地震』を見る