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映画『きさらぎ駅(2022年)』感想レビュー|都市伝説スレッドとの違い・演出・衝撃ラストまで徹底解説

展開は やや強引。それでも引き込みの強い力作ホラー作品。

ラストが衝撃!展開を一気に塗り替えるホラー映画『きさらぎ駅』

2000年代の匿名掲示板「2ちゃんねる」で、実際に投稿されたスレッド「きさらぎ駅」をもとに映画化された、都市伝説系の和製ジャパニーズホラー。

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全体的には荒削り、演技や設定面でのお粗末さもあるが、勢いと独特の不気味さで視聴者の感情を惹き込んでいく、まさにホラー映画の魅力が詰まった一本だ。

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大学で民俗学を学ぶ堤春奈(恒松祐里)は、卒業論文で十数年来、ネットで現代版”神隠し”と話題になっている都市伝説「きさらぎ駅」を題材に取り上げることにした。リサーチの結果、「きさらぎ駅」の原点となった書き込みの投稿者『はすみ』ではないかとされる葉山純子(佐藤江梨子)という女性の存在を知る。ようやく純子への連絡先を知り、純子と会う約束を取り付ける。指定された場所は「きさらぎ駅」の舞台となった路線にある一軒家。部屋へ案内され、早速、ネットで噂される『はすみ』本人との真偽を確かめる春奈に対し、純子はどこか謎めいた笑いを浮かべる。

引用:Amazon.co.jp: きさらぎ駅|Prime Video

開始直後から恐怖が迫る!ジャパニーズホラー映画『きさらぎ駅』の瞬発力

映画『きさらぎ駅』は、日本のホラー映画らしい不気味な雰囲気をしっかりガッチリ装備した作品。

ダラダラとした導入はなく、ストーリーの冒頭から真っ先に本題へと突入。視聴者をホラー展開へと引き込むテンポの良さが印象的で、恐怖映画としての瞬発力を私に感じさてくれた。

 

映画『きさらぎ駅』と原点スレッド「きさらぎ駅」の違いを比較

レビュー感想の前に、まずは映画『きさらぎ駅』と、そのモチーフとなった実在するスレッド「きさらぎ駅」との違いを整理しておこう。原点と映画はどこが異なるのか?

これを知っておけば、本作をより楽しめること請け合いである。

2ちゃんねる発の都市伝説「きさらぎ駅」とは

「きさらぎ駅」は2004年、インターネットの匿名掲示板”2ちゃんねる”のオカルト板(オカルトを話題にする場所)に投稿された実録風の怪談スレッド(スレッド:個別の話題)である。深夜、静岡の私鉄に乗った投稿者「はすみ」が、現実には存在しない駅に迷い込む様子を実況形式で書き込みを行い、ネット上で都市伝説化した。映画以外にもゲームや漫画など、派生作品が多数作られている。

一方、映画『きさらぎ駅』は、このスレッドをモチーフに新たな物語を構築したホラー映画である。両者を比較すると、ホラーとしての性質の違いや映画版の映像化に伴う脚色部分などが浮き出てくる。

スレッドの未解決感と映画のストーリー化

前述の通り、映画の元となった都市伝説「きさらぎ駅」は、”はすみ”と名乗る人物が2004年に「2ちゃんねる」掲示板にスレッドを投稿したものである。

スレッドでは、はすみの書き込みは途中で途絶え、彼女の安否は不明のまま終わる。話が解決せずに残されてしまったことで、真偽不明の恐怖が当時は話題となった。

しかし映画『きさらぎ駅』では、はすみ(佐藤江梨子)は存命であり、大学で都市伝説を研究する堤春奈(恒松祐里)が彼女を訪ねるところからストーリーが始まる。はすみが掲示板に書き込んだ、体験したことを振り返る形で、映画では序盤 展開するのだ。

つまり、映画ではスレッドに書き込んだ体験での、その後も描かれているというわけである。

電車内の描写の違い

スレッドの内容に焦点を移すと、はすみは電車に乗っている最中、掲示板に「自分以外に5人の乗客がいる」と書き込む。映画でも男3、女2の5人の乗客が映し出される。

その後、スレッドではすみは1人で下車するが、対して映画でははすみと他の乗客5人も下車をする。ここの違いは多分、映画の作中においてそれぞれのキャラクターに役割を担ってもらうためだろう。

ストーリーが進むと、スレッドでははすみ1人が奇妙なおじいさんや、不思議な現象にみまわれる。

文章であれば読み手の想像が掻き立てられて、テキスト表現でもディティール深いものになるんだろうが、映像だとちょっと恐怖演出として物足りない。そこで、複数人の会話劇や行動によって、物語に広がりを持たせようというのだろう。

「実況感」と「映像演出」の差

スレッドで感じる恐怖にある最も特徴的な点は、リアルタイムに進行する臨場感であろう。匿名の利用者が「逃げろ」とか「振り向くな」とか助言を書き込み、読み手はその一員として体験を共有した。結末が未完了のまま終わることで、そしてそれは強烈な余韻を残す。

映画はこの「実況感」を再現せずに、代わりに映像演出を重視した。廃駅や怪奇現象のビジュアル表現は、元の「きさらぎ駅」を知らない層にも分かりやすい恐怖を与える狙いがある。

ちなみに、映画でも2ちゃんねるの実況感を再現したものの一つに映画『電車男』があり、TVドラマ化もされた。『電車男』なら知っている、という人も多いだろう。

 

怪異描写の違い

スレッドでは「太鼓と鈴の音」「片足の老人」「比奈へ向かう車」などといった断片的な描写が散りばめられ、解釈は読者に委ねられる形に必然と、なる。この曖昧さこそが、恐怖をより深めるのだ。

映画の方は視聴者を納得させるために、怪異の由来をある程度は説明する必要がある。結果として得体の知れなさは薄れるが、ホラー映画として分かりやすい構成にさせている。

ネット文化と映画構造の違い

スレッドは無数の匿名の人たちが、はすみ一人の恐怖体験を見守る「群衆の怪談」であり、2000年代のネット文化を象徴している。

対して映画は主人公の堤春奈(恒松祐里)を中心にして、視聴者を当事者として異界に引き込む「一人称的な体験談」として描かれている。

まとめ:原石としてのスレッドと、加工品としての映画

スレッド「きさらぎ駅」は、未解決で終わる実録風の怪談としてネット文化の記念碑的存在である。その恐怖の源は「実況感」と「曖昧さ」だ。

映画『きさらぎ駅』は、その記念碑をモチーフに映像化されたホラー映画であり、恐怖の純度は下がるものの、ストーリー性と視覚的迫力でエンタメ性を高めている。したがって、私はスレッドを「ネット怪談の原石」、映画を「ホラー映画として磨かれた加工品」として位置づけることにした。

 

映画『きさらぎ駅』レビュー|ドリームエフェクトと一人称視点が生む幻想的ホラー演出

ここからは、映画『きさらぎ駅』のレビューに入っていこう。

まず特筆すべきは、葉山純子(佐藤江梨子)の回想シーンで採用されたFPS(一人称視点)演出である。視点を制限することで臨場感が増し、私はまるで自分が怪奇現象に遭遇しているかのような没入体験を味わえた。この手法は、ちょっと他所では私はお目にかかったことがなく、強烈なインパクトを覚えた。

さらに、映像全体を覆うように施されたドリームエフェクト(夢幻的な映像効果:なんかこう、もやもやしているというかもよんもよん)が映える。視界のもたらす現実と非現実の境界が曖昧になり、白昼夢に迷い込んだような浮遊感を視聴者に与えるのだ。都市伝説を題材にした『きさらぎ駅』という物語に、この幻想的な演出は非常に相性が良かった。

また、効果音の使い方も巧みで、ありがちなジャンプスケア(突発的な脅かし要素)も自然に組み込まれており、心理的な恐怖と視覚的な恐怖のバランスが取れた演出になっている。

映像と音響の両面から恐怖を体験させる仕掛けは、ホラー映画として高く評価できる要素だろう。

 

映画『きさらぎ駅』レビュー|気になった残念ポイントを解説

ここでは、私が映画『きさらぎ駅』を鑑賞して感じた「惜しい点」や「残念ポイント」を挙げていく。本作は雰囲気づくりが非常に優れたホラー映画であっただけに、粗い部分が目立ってしまったトコロも否めない。

雰囲気を台無しにする“超ド級”の大根演技

本作は映像や雰囲気の演出に成功している一方で、一部キャストの演技の拙さが恐怖を大きく削いでいた。

中でもヤンキー役の人物は、ド素人を超える、ドレッドノートではないある意味で超ド級な演技を披露してくれた。これはもはや、ホラー映画の空気感を台無しにする破壊力。恐怖演出の緊張感を吹き飛ばし、一気に視聴者を現実へと引き戻す。

ヤンキー役、つまり集団行動のまとまりを乱す役は、ことサスペンス・ミステリーやホラー映画ではよくある要素で、集団をバラけさせ新たな事件やトラブルを引き起こす重要な役割を担うのだが、大切な役回りなだけに上手い演技が要求される。

もっとストイックな演技表現や、自然な立ち回りをしていれば視覚効果と雰囲気演出が引き立てあって、もっと高評価を得られるホラー映画になっていたように私は思う。非常に惜しい、悔しい残念なポイントだ。

説得力ゼロの不自然な行動とご都合主義展開

「異世界に迷い込む」という、ホラーな設定自体は魅力的である。しかし、それを前提にしても登場人物の行動や言動が不自然すぎると私は感じた。

たとえば、異世界に迷い込んだ人々は正真正銘、人間の設定のハズ。なのに突然「俺に指図してんじゃねぇよ!」と叫びナイフを仲間に突きつけたり、さらに「生贄にすれば助かる」とかいうなんの根拠もない謎な急展開を見せる。狂気に至る描写や前兆がないため、観ているコッチはおいてけぼりだ。

また主人公・堤春奈(恒松祐里)が逃げるためとはいえ、端から見れば一般の人を石で襲って車を奪うのには無理があるし、仲間も言われるがままにその車に乗っちゃうのにも少々無理があると感じた。

「ホラー映画だから」では済まされないご都合主義の脚本が目立ち、物語のリアリティや緊張感を損ねていたのには、残念に私は思った。

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レビューまとめ|映像美と衝撃のラストが光るホラー作品

ここまでやや苦言も呈してきたが、映画『きさらぎ駅』はホラー映画として決して駄作ではない。むしろ映像効果の美しさや演出の独創性によって、私は強く惹き込まれた。幻想的な映像美と不気味さの雰囲気づくりは、近年の邦画ホラーの中でもなかなかに上々な仕上がりである。

ホラー作品である以上、ストーリーの整合性はある程度はまぁ、割り切る必要があると私は考えるが、それでも先が気になる構成とテンポの良い展開は魅力であったし、視聴者を飽きさせない力は見事と言えるだろう。

予想を裏切るラストの衝撃──人間こそが一番怖い

そして、何よりも特筆すべきは終盤である。ラストに訪れる”まさかまさかの展開”は、本当の恐ろしさは幽霊や怪異ではなく、人間が牙を剥く瞬間にあることを教えてくれた。ホラー映画の中でも異様な余韻を残しつつ、さらには「うわぁ…こいつやりやがったな…」そう覚えさせる感覚は強烈にそれを刻みつけてくる。その一撃の重さは、鑑賞後もしばらく忘れられない。

映画『きさらぎ駅』はこんな人にオススメ!

  • 都市伝説系ホラーやオカルト怪談が好きな人
  • ストーリーの粗よりも雰囲気や映像美を楽しみたい人
  • 独特な映像演出や一人称視点のホラー表現に興味がある人

本編は81分とコンパクトで、気軽にホラーを楽しみたい時にも最適。スリリングな展開と強烈な余韻を味わいたい方には、一見の価値あり!

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映画『きさらぎ駅(2022年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:永江二朗
  • 出演:恒松祐里、本田望結、莉子、寺坂頼我、木原瑠生、瀧七海、堰沢結衣、芹澤興人、佐藤江梨子
  • 公開年:2022年
  • ジャンル:ホラー、都市伝説

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