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中国映画『僕と彼女のファースト・ハグ』感想・レビュー|音楽と恋が心を変えるロマンス

韓国映画『プランマン ~恋のアラームが止まらない!~』を原案に、中国で2020年12月31日に公開されたラブコメディ。
極度の潔癖症であるピアノ教師をチャン・ユエン、ズボラなミュージシャンをリー・チンが演じる。
チャン・ユエンが監督・脚本・主演を兼任し、共演にはシェン・トン、チャオ・シャン、マー・リーらが名を連ねる。

🎹音楽が、二人の世界を変えていく──中国映画『僕と彼女のファースト・ハグ』

感想『僕と彼女のファースト・ハグ』レビュー

規則正しく、1秒の無駄もない日常を過ごしてきた青年が、偶然の出会いによって全く予想だにしなかった世界へ足を踏み入れる――。

几帳面すぎるほど潔癖症なピアノ教師・バオ・バオ(チャン・ユエン)と、自由気ままに音楽を楽しむ女性ミュージシャン・ウェンヌワン(リー・チン)。中国映画『僕と彼女のファースト・ハグ』は、そんな対照的な二人が出会うところから物語が動き出す。

異なる価値観がぶつかり合い、ときにすれ違いながらも、音楽を通じて心を開き合い、互いに少しずつ変わっていく姿が描かれていく。

笑いあり、トキメキあり、そして余韻の残る結末。

『僕と彼女のファースト・ハグ』は、音楽好きにも恋愛映画好きにもオススメできる感動のラブストーリーである。

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『僕と彼女のファースト・ハグ』あらすじ

バオ・バオはすべてを時間と規則で完璧に制御する潔癖症のピアノ教師。孤独な日々を送る彼は、自分の感情すら整理してしまいがちだった。そんなある日、道でぶつかった相手が、型破りで自由奔放なミュージシャン・ウェンヌワンだった。
たまたま彼女が出場する音楽番組の会場に巻き込まれたバオ・バオは、思いも寄らぬ形でパフォーマンスに参加。彼らの出会いは予想以上の反響を呼び、一夜にして注目の存在となる。
戸惑いながらも、そのチャンスを生かそうとバオ・バオはウェンヌワンとペアを組み、音楽番組での優勝を目指すことに。互いの欠点や過去に隠された傷に向き合いながら、2人は心の距離を 少しずつ縮めていく。

色彩と演出が魅せる中国ロマンスコメディ

中国発のロマンティック・コメディ映画『僕と彼女のファースト・ハグ』は、歌って楽しい・観て嬉しい・元気がでる魅力が詰まっているエンターテインメント作品だ。

主人公バオ・バオは、自他ともに厳しい病的に几帳面な”潔癖症ピアノ教師”。彼の身の回りのすべて、部屋のインテリアから小物に至るまでが**モノトーン**で統一されており、清潔感と冷たさが漂うミニマリスト的なセンスを演出している。時間の一秒一秒なまでにキッチリと管理し、整然とした生活に安心を覚える彼の世界観は、視覚的にも”統率された秩序”として描かれている。

モノトーンの家具が理路整然と置かれている

ミニマリストな部屋

一方、ヒロインのウェンヌワンはバオ・バオとは真逆の生活スタイル。彼女の空間は**散らかり放題**で色鮮やかな小物にあふれ、壁の色、家具、雑貨、衣服に至るまでがカラフル。自由奔放で、音楽と感情を満喫する彼女らしいエネルギッシュなインテリアだ。

カラフルな部屋にカラフルな家具や衣類が散らかっている

カラフルな散らかった部屋

この二つの世界を、本映画は映像美と演出で巧みに対比させていた。「モノトーン vs カラフル」「静 vs 動」「整頓された秩序 vs 自由な創造性」。街中の景観、建物の内外部の装飾、撮影セットの配色にもこの“色彩の対比”が活かされていて、◇視覚的◇なインパクトを通してキャラクターの性格や内面の葛藤を強く印象づけている。

他のサブキャラクターの描写も見事だ。ざっくばらんに個性が強く、かといってごちゃごちゃしていなく、存在感が強調されていながらも整頓されている。序盤は装飾の少ないモノクロームのクールな印象から、ストーリーが進むにつれて少しずつ“色づいていく”ような流れが心地よく、私の感情とも同期していく。

このような視覚的な比喩と色彩の使い方は、まさに「映像によるキャラクター内面の表現」そのもの。「整然とした生活」を破られたとき、人はどう感じ、どう変わっていくのか。その変化を“大きな色彩の変化”として映し出している点は、中国映画ならではのビジュアル・演出力の光るところだ。

 

心の傷を抱えた二人が奏でる、涙と笑顔の音楽物語

中国映画『僕と彼女のファースト・ハグ』を観終えた後に残るのは、ただの恋愛映画としてではなく、深い人間ドラマへの感情である。ストーリーの完成度は非常に高く、本作を基準にしてしまうと今後の他の中国映画を視聴したとき、物足りなく感じてしまうのではないか。そんな危惧さえも呼び起こされれしまう。

ストーリーの完成度だけでなく、キャラクターの掘り下げも深いところまで届いている。

主人公のバオ・バオが、なぜ潔癖症になったのか。彼の過去には悲しみがあり、その経験が性格や行動にどのような影響を与えてきたのかが丁寧に描かれている。視聴者は彼の心の痛みに共感し、同時にそこに潜む愛情にも触れることになる。その描写は切なくも温かく、私は思わず涙したほどだ。

一方で、ヒロインのウェンヌワンもまた過去に傷を負っている。しかしこの映画は「傷の舐め合い」で終わらない。二人は互いに支え合い、時には反発しながらも、ともに成長していく。その過程がストーリーを通じて、視聴者自身も一緒に人間として大きくなっているような感覚を味わえる。

特に印象的だったのは、主人公バオ・バオが過去を乗り越えた後の変化だ。吹っ切れた瞬間からの彼はまるで別人のように“超レベルの高いイケメン”に変貌する。まるで魔法のような変化だが、それは俳優としても力量を感じさせるものであり、短い上映時間のなかでここまで人物像に変化させられる演技力に圧倒される。

また、音楽はこのストーリーの核となる要素である。二人の心情の変化に合わせてメロディが響き、彼らの距離を近づけていく。視聴者もその音楽に導かれ、感情を共有できる点が本作の大きな魅力だ。

『僕と彼女のファースト・ハグ』は、恋愛映画でありながら、人間の成長と癒しを描いた秀作である。心に残る映画を求める人、音楽を通じて感情が動く瞬間を味わいたい人には、ぜひオススメしたい。

 

考察|中国映画の新しい可能性を示す『僕と彼女のファースト・ハグ』

中国映画『僕と彼女のファースト・ハグ』を視聴してまず驚かされるのは、従来の中国映画にはあまり見られなかった“柔らかさ”があることだ。これまで中国映画といえば、歴史大作やファンタジー作品が主流で、まぁよく耳にする中国当局の”検閲”の影響もあり、硬質で重厚なイメージが強かった。普遍的なテーマを扱いながらも、韓国映画や韓国ドラマのように視聴者の感情を揺さぶるタイプの映画とは一線を画してきた。

ところが本作は、潔癖症という個人の内面に焦点を当てて、恋愛や音楽といっただれもが共感できる題材を軸に据えながらストーリーを紡いでいる。悲しい過去を持つ二人が互いに支えあいながら成長していく姿をポップに描いている所は、従来の「重厚で距離を感じる物語」という中国映画のイメージを大きく覆すものである。

なぜ本作は生まれたのか。その背景にはいくつかのポイントがあるように思う。考えてみよう。

まずは第一に恋愛や青春、音楽ジャンルという題材だ。調べによると、これらは中国政府?のいわゆる”検閲”に比較的通りやすいらしい。

そして第二に、中国映画市場の主力層である若者は、すでに韓国ドラマやK-POP、ハリウッド映画に慣れ親しんでおり、これまでの中国作品な歴史大作では彼らに届きにくくなっているということ。

さらに第三に、海外展開を意識するのなら、国境を越えて共感を得やすい「個人の成長」「音楽による解放」といったテーマがピッタリであるということだ。

このように考えると、『僕と彼女のファースト・ハグ』は制約の多い中国映画界だからこそ生まれた新しい方向性だと言える。検閲に抵触しない範囲で最大限に普遍性とエンターテインメント性を発揮し、現代的で共感性の高いラブストーリーとして完成している。

制約による発展の考察を書いたレビューはコチラ

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さらにグローバルな広い視点で見ていけば、本作は中国における映画の役割そのものを示している。韓国が「K-POP」や「韓流ドラマ」を国家戦略として輸出したように、中国も近年「文化力」をソフトパワーとして重視し始めているようである。軍事力や資本力の拡大とは異なり、映画や音楽といった文化輸出は他国に脅威を与えることなく「好感」を得ることができる。これは最も平和的で、健全な国力強化の手段と言えるだろう。

あまりブログでは政治的なことを語りたくないが、もちろん中国には人権問題や台湾有事の危険性など、見過ごすことのできない側面はある。政治的圧力や軍事的な圧迫を武器に国力を誇示してる分ももちろんあるのだが、それでもいくらかの方面でソフトパワーに力を入れ始めていることは、本作や以前にレビューした中華アニメーションを見ればわかる。

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それは人類として、喜ばしい希望ではなかろうか。

『僕と彼女のファースト・ハグ』は、中国映画の硬いイメージを柔らかくし、日本を含む海外で受け入れられる可能性を持つ作品である。単なる一本のラブストーリーにとどまらず、中国映画の未来、果ては新しい中国を切り開く試みとして、文化的な意味を持つ点にこそ、この作品の価値がある。

 

こんな人にオススメ!

  • 恋愛映画が好きで、心温まるラブストーリーを求めている人
  • 音楽映画や音楽をテーマにした作品に惹かれる人
  • 中国映画に興味がある、または新しいタイプの中国映画を体験したい人
  • 主人公の成長や心の変化を描いたヒューマンドラマに共感したい人
  • コメディ要素と感動要素のバランスがあるロマンティック・コメディを楽しみたい人
  • 韓国ドラマやハリウッド映画のラブストーリーを観てきて、異なる文化圏の恋愛映画を探している人

 

まとめ

中国映画『僕と彼女のファースト・ハグ』は、恋愛映画としてのトキメキや音楽の魅力を楽しめるだけでなく、人間の心の成長や癒しを描いた深みにある作品である。潔癖症のピアノ教師と自由奔放なミュージシャンという対照的な二人が出会い、互いに影響を受けながら変わっていく姿は、視聴者の心にも強い余韻を残す。

従来の硬いイメージを持つ中国映画に対し、本作品は“柔らかさ”と“ポップさ”を取り入れ、中国映画の新しい方向性を示している点も注目できるポイントだ。普遍的なテーマである恋愛・音楽・成長を軸に据えることで、国境を越えて共感されやすい作品に仕上がっている。

映画としての完成度は高く、他サイトの感想・レビューを通じても高い評価を得ている理由が良く分かる。

音楽を愛する人、心に残るラブストーリーを探している人、そして中国映画の新しい魅力に触れたい人にとって、『僕と彼女のファースト・ハグ』はオススメできる一本だ。

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映画『僕と彼女のファースト・ハグ(2020年)』の作品情報まとめ(監督・キャスト・配信情報など)

  • 監督:チャン・ユエン
  • 出演:チャン・ユエン, リー・チン, シェン・トン, チャオ・シャン, マー・リー, アイ・ルン
  • 公開年:2020年
  • 上映時間:111分
  • ジャンル:ロマンス, コメディ

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